公益財団法人教育支援グローバル基金|ビヨンドトゥモロー

児童養護施設へ入所し、人生で初めて、自分の夢について考える余裕が生まれた

西塚 明美

参加年次 : 高校2年

私の両親はブラジルで生まれ育ちました。幼い頃から両親のケンカが絶えず、父親が帰って来なくなり、母と弟二人との暮らしになりました。母は日本語が話せず、仕事が続かないため経済的に苦しくなり、ストレスを抱えた母は、毎日のように私に暴力をふるい、言葉で罵られる生活が続きました。痛く、辛かったけれど、親子とはそういうものなんだろうと思って育ちました。しかし、中学2年生の時、母に内緒で友達の家に泊まりに行った際、同じ母子家庭で貧しいにも関わらず、仲良く笑いあう親子に強い衝撃を受けました。

それ以来、母からの言葉の暴力を受け止めきれなくなり、自傷行為を始めました。リストカットをしたり、一気に何十錠も薬をのんだり、不安定な時期でした。高校2年になる少し前、「もう、学校に通う日はない。これから働いてもらう」と言われ怖くなり、翌日アルバイトに行くと嘘をついて家をでて、それが家に暮らす最後となりました。学校の先生に助けを求め、私は一時保護され、児童養護施設に来ることになりました。児童養護施設での暮らしは、担当の職員さんが前向きで明るく、私もこうなりたいと思うようになりました。人生で初めて、自分の夢について考える余裕が生まれました。

そんな頃、施設長さんが、ビヨンドトゥモローのチラシを見せて、参加を勧めてくれました。悩みながらも参加し、仲間に自らの体験を話すと、皆が聞いてくれ、「自分だけじゃなかったんだ」と初めて思うことができました。「こんなに感動する場所があったんだ、帰りたくない!」と、帰りの新幹線の中で泣いたほど、自分にとって大きな機会となりました。その後の、児童養護施設に暮らす高校生を対象とした1年間のプログラム「エンデバー」では、メンバーのすごさに圧倒され、全く話したり、意見を言ったりすることが出来ず、悔しさがあふれました。

しかし、その悔しさを忘れることなく、自分の意見を言えるようになろうと決心しました。日常生活の中でも自分の考えを話す努力を続け、翌年のエンデバーではワークショップの企画と運営を手伝い、自分自身のさらなる成長を感じました。

これらのプログラムに参加したことで、憧れていた児童養護施設の職員になりたい、子供の居場所を作りたい、という夢が明確になり、短大で幼児教育を学びました。外国人の子供たちの学習支援ボランティアにも携わり、貧困などの社会問題についても考える機会を得ました。来春からは社会人になりますが、念願の児童養護施設職員の内定をいただくことができました。今後は子供達に寄り添い、彼らが安心できる居場所を作れるよう、頑張っていきたいです。