ビヨンドトゥモローアジアサマープログラム2015
~アジアにおける防災のための、若者による行動へのパートナーシップ~
映像
概要
一般財団法人教育支援グローバル基金は、2015年夏に「ビヨンドトゥモロー夏季グローバル研修 アジアサマープログラム2015」を開催しました。本プログラムは、日本・ネパール・フィリピンの若者が、フィリピンを訪れ、防災について考えることを目的として開催されました。3か国でそれぞれに自然災害を体験した若者が、2013年11月の台風ヨランダが直撃したレイテ島の被災地域を訪問し、防災に関する現地のニーズについて考え、防災に関する施策について発信。また、参加者たちは、アジア地域における社会経済的な基盤の強化を含む、アジアの将来の防災における若者参画について提言を作成し、プログラム終盤にゲストの前で発表を行いました。
日時
8月19日~27日
参加者
日本(5名) | 2011年の東日本大震災を経験した若者 |
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フィリピン(6名) | 2011年の台風センドンまたは2013年の台風ヨランダを経験した若者 |
ネパール(3名) | 2015年4月の地震を経験した若者 |
アジアサマープログラム2015参加者一覧 – 日本参加者 –
阿部 成子 神田外語大学外国語学部(宮城県佐沼高等学校卒業) 津波で父と祖母を亡くし、自宅も流失。絶望の中に暮らしていた時、ケニアの子供たちが、訪れたこともなくどこにあるかもわからない日本のために涙を流しながら唄う姿に希望を見出し、世界へ踏み出す勇気を得た。絶望の後には良いことしか起きないはずと信じて海外短期留学に挑戦し、不安でも行動すれば何かを得られることを体感する機会となった。大学では、国際人としての教養を身に着け、世界平和に貢献できる人材になり、亡くなった父と祖母にも見てもらえるような大きなことを成し遂げたい。 | |
安倍 有紀(ビヨンドトゥモロー/三菱重工業特別奨学生) 日本大学法学部(日本大学東北高等学校卒業) 震災により、家族全員で避難した先で父を亡くす。ビヨンドトゥモローの活動に参加したばかりの頃は、自分に自信がなく、周囲が自分より意識が高くしっかりしているように思え、泣いたり反省したりするばかりだったが、2014年東北未来リーダーズサミットで初めて自らの被災体験を話し、「自分にもできる」と自信がついた。震災の恐ろしさ、家族を失った苦しみを、まだ心の中で悩んでいる人に知ってもらうことで、自分の経験を人々や社会に活かしていきたいと考えている。 | |
西城 国琳 拓殖大学 国際学部(宮城県気仙沼高等学校卒業) 津波で南三陸町の家を失う。震災を通じて、「教育」「情報」の大切さを知り、アフリカの貧困地域で教育を普及させ、多くの子どもたちが夢を実現できる社会作りをしたいと考えている。ビヨンドトゥモローの活動では、タイ、フィリピン、インドネシアなど、アジア各国を訪問。東北被災地出身の代表として、アジアにおける防災の枠組み作りにも積極的に参画している。 | |
澤田 万尋(ビヨンドトゥモロー/三菱重工業特別奨学生) 早稲田大学基幹理工学部(宮城県仙台第二高等学校卒業) 震災直後に訪れた石巻の壊滅的な状況に衝撃を受ける。一日一日が尊いもので、自分は生かされていると感じ、ならば自分には何ができるのかと考えたことが将来を考える上での原点となった。高校在学中にビヨンドトゥモローの海外研修で欧州を訪問し、世界中から知力と技術を集結させ、開発に挑む航空業界に大きな魅力を感じた。将来は、機体開発に携わり、災害時に孤立した遠隔地域に支援を届けられるような無人機の開発など、航空業界においてイノベーションを起こしたいと考えている。 | |
福田 栞(ビヨンドトゥモロー/TOMODACHI特別奨学生) 岩手大学工学部(宮城県多賀城高等学校卒業) 東日本大震災の教訓となればと、震災時、車の上で救助を待った体験を話してきたが、救助された後、共に避難した祖母を置いてきてしまい、祖母を亡くしたことについて話せず、後悔する日々が2年以上続いた。ビヨンドトゥモローの活動に参加し体験共有の時間に初めてその被災体験を語ると、もっと辛い体験をした仲間たちが自分の話を受け止めてくれた。震災は自分に命や家族の大切さを教えてくれたと考えるようになり、将来は国土交通省で、災害に強いまちづくりに携わることを目指している。 |
アジアサマープログラム2015参加者一覧 – ネパール参加者 –
プラミラ・デウジャ クンダリーニ・ネイチャー病院 地震で深刻な被害を受けたシンドパルチョーク出身。地震で、祖父母と家を失くした。地震後の雨季の土砂崩れや川の氾濫で更なる被害が生まれる状況も目の当たりにした。現在は、カトマンズの病院で、ヨガ教師として勤務し、地震の被害者のサポートを行っている。ビヨンドトゥモローアジアサマープログラムで学んだ知識や技術を、今後、苦しんでいる人のために活用すると共に、人々が災害に備えるために尽力したいと考えている。 | |
シャーミラ・ヘンググ カトマンズ大学 2015年4月の地震で壊滅的な被害を受けたバクタプル出身。地震で自宅が倒壊し、救助されるまでの6時間、瓦礫の下で生き埋めになった。後日、共に生き埋めとなった妹が亡くなったことを知る。ビヨンドトゥモローアジアサマープログラムに参加することで、日本・フィリピンからの仲間に会い、彼らがどのように災害での困難な体験を乗り越えたのかを学びたいと考えている。カトマンズ大学では、美術とグラフィックコミュニケーションを学んでおり、また、ダンスも特技。 | |
ニル・ラマ トリプバン大学 トリプバン大学カンティプール経営人文学院にて社会学を学び、2014年に卒業した。4月の地震の影響により、カトマンズの自宅から避難し、1週間を仮設テントで過ごした。地震の後、赤十字の活動やカナダ軍の緊急支援に通訳ボランティアとして参加。2016年から、オーストラリアに社会学の勉強のために留学する予定でいる。 |
アジアサマープログラム2015参加者一覧 – フィリピン参加者 –
フランシスコ・C・バングイス・ジュニア 香港大学アジア政治経済学院
(フィリピン大学ヴィサヤス・タクロバン校コミュニケーションアーツ学部卒業)
フィリピン大学での最終学期に、台風ヨランダが大学キャンパスを破壊した。学生代表として、学生の保護や、学生のとりまとめに奔走する。卒業後は、被災地の子供を支援する国際NGOで働いた。また、ビヨンドトゥモローや国際交流基金のアジアにおける防災にむけた取り組みに参加。将来は、弁護士または政治家として祖国に良い変化をもたらすことができる存在になり、若い世代に勇気を与え、災害に強く、進歩を続けられるコミュニティを構築していきたいと考えている。
ノエル・A・ガルシア
フィリピン大学ヴィサヤス・タクロバン校コンピューターサイエンス専攻
苦しんでいる人々を助けたいと、以前は医師を志していたが、コンピューターサイエンスに進路を変更した。それでもなお、人々を助けたいという気持ちはあせることはなかった。台風ヨランダが発生し、食糧や水の不足に困窮するという事態を経験したことから、今後の人生の困難に向き合い、自分の地域や国により良い変化をもたらすべく尽力すると決意している。
チャールズ・ヴィンセント・マルナラン
香港大学アジア政治経済学院(フィリピン大学ヴィサヤス・タクロバン校心理学学部卒業)
周囲からその活発さ、学生リーダーとしての資質を認められるほどに、学生団体やボランティア、会議運営などに積極的に取り組む。タクロバンの街は、支援団体が駆けつけるまで見るも無残な状況で、台風ヨランダでの経験は、電気が来ずに眠れぬ日々、配給食糧だけで生き延びる日々を通じ、人としてどうあるべきかを試された経験であったと思う。ビヨンドトゥモローを通じて、防災について伝えたり、防災活動を企画することで他者の役に立つ活動をしたいと考えている。
プリンス・アート・マトル
ドーニャ・レメディオス・トリニダード・ロムアルデス医療財団 医療技術科学学部
17歳の時、台風ヨランダが彼の家を襲い、一部損壊。数えきれないほどの世帯が家を失い、子供たちが泣き叫び、遺体があちこちにある状況を目の当たりにした。そのような体験を経て、苦しみを繰り返したくないと思うようになった。常に医療科学や健康に関連した領域に関心があり、将来は、人々の命を救うことのできる医師になりたいと考えている。
マリア・クリスティン・オルビサノ
ドーニャ・レメディオス・トリニダード・ロムアルデス医療財団 医療技術科学学部
台風ヨランダは、家族を大切にし、人生の一瞬一瞬を大切にしなければならないということを教えてくれたと考えている。医療技術科学を学び、外科医を目指しており、将来は病院に勤務し、患者さんに必要なケアを提供できるようになりたい。また、フィリピンの各地への医療派遣に参加し、困っている人々の役に立ち、勇気を与えられる存在になりたいと考えている。
ジェサ・テレーズ・ラピラップ
キャピトル大学中等教育学部英語専攻卒業
現在、カガヤン・デ・オロ市で教員及びガイダンスカウンセラーとして働く。故郷であるカガヤン・デ・オロ市は、ミンナダオ島北部を襲った2011年の台風センドンで深刻な影響を受けた。その時の悲惨な体験が、2014年のビヨンドトゥモローサマープログラムでの防災に関する活動に参加する気持ちにつながった。自然災害による被害を防ぐためには、教育が必要と考え、教員として、防災に対して積極的に取り組む気持ちを若い世代に醸成していきたいと考えている。
プログラム
9日間に渡ったプログラムは、アジア太平洋地域における防災政策に意味ある発信を行うための若者によるプラットフォームの構築を狙うと共に、自然災害における個人の体験を共有し、対話に臨むことで、3か国の参加者同士の信頼を高めることも目的としていました。参加学生たちは、レイテ島でのフィールドワーク、セブ島でのリフレクション、マニラでの提言発表を通し、団結し、強い絆を結ぶこととなりました。
レイテ島
2013年の台風ヨランダで甚大な被害を受けたレイテ島では、現地の方々の生の声をきくフィールドワークを実施し、今後の防災のために何が必要なのかについて学ぶ機会を持ちました。
セブ島
レイテ島でのフィールドワークを終え、セブ島の静かな海辺で、参加学生たちはリフレクションの時間を持ちました。自らの被災体験、レイテ島での学び、そして新しい仲間との出会いからの発見。様々な想いを仲間たちと共有し、そして自己と向き合う時間となりました。
マニラ
9日間のプログラムは、マニラでの閉会式で締めくくられました。レイテ島とセブ島での学びをプレゼンテーションの形にまとめ、「アジアの防災のために若者は何ができるか」をテーマに、ゲストたちの前で発表しました。そして今回のプログラムを一回のイベントに終わらせることなく、3か国の間に生まれた絆を更に発展させ、アジアの若者による災害リスク管理ネットワークとして育てるべく、今回の取り組みや人的ネットワークを広げていくことが期待されています。
参加学生コメント
共催
国際交流基金マニラ日本文化センター