公益財団法人教育支援グローバル基金|ビヨンドトゥモロー

TOMODACHI ビヨンドトゥモロー グローバル・リーダーシップ・アカデミー2015

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報告書(PDF)

概要

一般財団法人教育支援グローバル基金は、2015 年3 月に、米日カウンシル-ジャパン TOMODACHI イニシアチブとの共催の下、 TOMODACHIビヨンドトゥモローグローバル・リーダーシップ・アカデミー2015 を開催しました。TOMODACHI イニシアチブの各プログラムで渡米した高校生・大学生の中から選考された70 名が、今後、国際社会で自分たちが果たすべき役割について考える機会となりました。参加学生たちは、3 日間の対話・ディスカッション形式のプログラムを通して、自らの米国での学 びや経験を基に、様々な領域で活躍するリーダーたちによるアドバイスを踏まえ、国連ミレニアム開発目標達成目標年である2015 年以降、世界の貧困問題を解決するために何を行うべきかのアクションプランをまとめました。参加学生たちは、作成したアクションプランを、最終日に、政治・行政・ビジネス・メディア・NGO など各方面のリーダーたちの前で発表、外務省国際協力局審議官に提言として手渡されました。

目的

  • 参加者たちが、米国での体験を通してどんなことを学んだか、そして、その体験や学びを基に国際社会の中で自分たちに何ができるか、何をしていきたいかを考える。
  • 参加者たちが、幅広い領域で活躍するリーダーや先輩たちとの対話を通し、将来のビジョンを具体的に描くことができるきっかけとする。
  • 参加者たちが、東北を代表してアメリカに行ったという共通項を持つTOMODACHI世代として、志を共にする仲間と議論し意見を交わすことで、互いに切磋琢磨する機会を持つ。

日程・開催地

2015年3月6日(金)~3月8日(日)
国立オリンピック記念青少年総合センター(東京・渋谷区)
コレド日本橋(東京・中央区)
東京アメリカンクラブ(東京・港区)

参加者

参加学生70名

これまでTOMODACHIイニシアチブの各プログラムで渡米した東北出身の高校生61名と大学生9名。大学生は、高校生の各9チームをまとめるチームリーダーとして参加しました。将来、グローバルに活躍するリーダーとなることを志す学生たちが、書類審査によって選抜されました。

メンター

本プログラムの支援企業であるバンクオブアメリカ・メリルリンチの社員の方々に加え、様々な領域で活躍している社会人の方々にボランティアとして各チームに参加いただき、プレゼンテーションの準備や、社会人としてのキャリア形成など、様々な面で学生たちにアドバイスをいただきました。

スピーカー・専門家

学生たちが世界の貧困問題について提言をまとめる上で、各分野において実際に活動を行っている団体のリーダーからインプットをいただくべく、インタビューセッションを行いました。人権、医療、教育のそれぞれの分野で、実際に活動をしているエクスパートがお越しくださいました。

参加学生の声

たくさんの方々に支えられながらも学生である私たちにできることはたくさんあると感じました。被災地3県、内陸の人も沿岸の人も全員どこかで傷ついていて、それをみんなで共有すること が、さまざまな困難を乗り越えて行く力になると実感しました。
渡辺 千夏(宮城県宮城第一高等学校1年)

アクションプランの発表で、最優秀賞をとれたことは、自分にとって誇りです。4年という月日が経って、震災が風化しているのを実感しているので、震災から得た教訓が忘れ去られないように伝え続けていきたいと思っています。
堀合 大樹(岩手県立山田高等学校1年)

プログラム概要

課題設定

「世界の貧困問題のために、自分たちにできること」

2015 年は、国連が2000 年の国連ミレニアム・サミットで採択した国連ミレニアム宣言を基にまとめた、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)の達成目標年です。達成目標年にあたり、未だに解決されていない貧困問題は何なのか?今後、その問題を解決するには何が必要なのか?を学び、考え、議論し、2015 年以降、次の15 年間の開発目標ー「MDGs 2030」とも言える、新しいアクションプランを策定しました。チームごとに策定したアクションプランは閉会式で発表され、集まったゲストによる投票が行われ、優勝チームは外務省国際協力局審議官に提言を届けました。

テーマ

人権
医療
教育

オープニングセッション「グローバルな社会変革とは?~変化を生み出すために、今、大切なことって?」

プログラム初日、井上英之慶應義塾大学特別招聘准教授にお越しいただき、様々な問題が山積する世界をより良くするためにどんな考え方をできるのかについてお話を伺い、ディスカッションを行いました。

「私」という存在と「仕事」、そして「世の中」はつながっているものです。それをまずは分かってほしい。そう考えると、一人一人の存在は、意外と大きいものかもしれません。だから、一人一人の経験やストーリーを大切にして欲しいと思います。

「Theory of Change」‐何をすると人の気持ちが変えられるのか?それを理解し、知ることが、社会や世の中を変える何かをしようとするときに、とても大切なことになると思います。そして、インプットからアウトプット、さらにアウトカム、結果の先にまで物事のつながりがあるということを理解することが必要です。今、感じていること、考えていること、そしてあなたたちの経験したストーリーを通じて、世の中を変えることを考えていって欲しいと思います。井上英之

課題の理解

参加学生は、アクションプラン策定に向け、まずは自分たちが経験した、アメリカでの生活から見えた、アメリカが抱える社会問題について話し合いました。大国と言われるアメリカにおいても様々な社会問題が存在し、人々には苦しみがあることが、見えてきました。それらを基に、世界に目を向け、地球規模で存在している様々な問題を理解し、解決するためのアクションプランを作成する議論を始めました。

アメリカが抱えている多くの社会問題は、国民一人一人に対し、『自己責任』という考え方が根強いことが理由となっていることが大きいと思う。例えば自分の身は自分で守るという考え方が、銃社会の問題の元であり、肥満の人が多いという健康問題も、健康管理は国民一人一人の責任に委ねられているから生まれるのではないだろうか?

アメリカで経験したり目にしたりした社会問題は、その多くが複雑に関係しあっていると思う。未だにある人種差別の問題が、経済格差の問題を生み、さらに貧困問題へとつながっていると思う。さらにそこから銃の問題とも絡みあって、治安が悪くなっていくなど、多くの社会問題が複雑に関係し合い、悪循環になっているように感じられる。

専門家インタビュー

人権問題

土井香苗
国際NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)日本代表

人権とは、人間が最低限の尊厳を持つことができるということ。教育を受けること、医療行為を受けることも人権に含まれます。難民などに対してモノを支給するなどの緊急援助は絶対に必要な援助ですが、人権問題はそのような緊急援助では救えません。法律をつくったり、必要な法律に変えたりすることが、真の意味で人権問題を解決する方法だと思います。

医療問題

スリングスビー BT
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金 CEO

教育を受けることができない人々が世界中にはたくさんいます。それらの人々には、教育のシステムをきちんとつくってから医療問題を解決する時間はありません。環境が整っていないことも多く、感染症などの医療問題が生まれます。貧困問題を解決するために働く、生活する場や働く場の環境が整わず病気になる、そしてまたお金が必要になる…悪循環が生まれています。それを正して、好循環に変えていくことが大切なことだと思います。

教育問題

松田悠介
Teach For Japan創設者/代表理事/CEO

日本にも教育の格差があることを知っていますか?子どもの貧困率は、アメリカが約20パーセントと言われていますが、日本も17パーセントという数字が出ています。すぐ近くに、そういう問題があるということ、他人事ではないということを知って欲しいと思っています。そして、それをどう良くしていくのか?ということにも関心を持ってもらいたい。それを考えることが、社会、そして世界をより良くしていくことになります。

キャリアナイト

参加学生たちは、プログラム一日目の夜、米日財団スコットM.ジョンソンフェローの方々と、対話する機会をいただきました。様々な分野でリーダーとして活躍されているフェローたちとのディナーセッションを通し、高校時代にどんなことを考えていたか、その後のキャリアについてなど、どう生きるべきかについての示唆をいただき、視野を広げる機会となりました。

キャリアナイトに参加された米日財団スコットM.ジョンソン フェローの皆様(50音順、敬称略)

伊藤守康: 明治神宮国際神道文化研究所権禰宜
井原慶子: カーレーサー
大橋英雄: 三菱商事インフラ金融事業部部長代理
貝原健太郎:外務省アジア大洋州局地域政策課主席事務官
片山健太郎:財務省主計局主査
桑島浩彰: 青山社中株式会社共同代表CFO
中山麻紀子:株式会社チアリングインターナショナル代表取締役
福原正大: igsZ代表取締役社長CEO 一橋大学大学院特任教授
堀憲明:  三沢市役所政策財政部国際交流課課長補佐
八木研:  ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社営業部門博士
山口孝太: 木村・多久島・山口法律事務所弁護士
山本康正: グーグル株式会社インダストリーマネージャ
和田真一: 日本銀行業務局企画役

閉会式

東日本大震災から4年が経ちました。参加学生同士、あの日の出来事について、プログラム中、語り合う機会がありました。4年の月日を経て、ようやく話すことができたこと、まだ心の整理がつかない記憶。それぞれが今の気持ちをぶつけあい、そして震災後に渡米したという共通の体験をベースに、「世界の貧困問題のために、自分たちにできること」を真剣に議論しました。震災を通して、社会を変革する当事者として自分たちに何ができるかを考えることの大切さを知った70名だからこそ考えることのできたアクションプランが、最終日の閉会式/提言発表会で発表されました。ミレニアム開発目標の達成目標とされた2015年を迎え、今後何をすべきかを見据えた学生たちの発表に、日米両政府、企業、学界、メディア、市民団体など、様々な領域を代表するゲストたちが耳を傾けました。

スペシャルメッセージ

ジェイソン・P・ハイランド
在日米国大使館主席公使

皆さんはこの数日間で貧困についてさまざまな議論を重ねたと伺いました。みなさんがこの問題と向き合える、教養、解決策について考えることは大変意義のあることです。TOMODACHI プログラムに参加の経験が きっかけとなり、地域の活動に参加しながら、さまざまなグローバル規模の課題を考える、議論し続けることを願っています。そして、その意識、行動がみなさんの故郷である東北地方に、ひいては世界に輝く未来をもたらすことを心から祈っています。

ティム・ラティモア
バンク・オブ・アメリカ・グループ 在日代表
メリルリンチ日本証券株式会社 代表取締役社長

この二日間、人権・医療・教育というテーマで日本から世界に貢献できること、発信できることについてディスカッションを重ね、プレゼンテーションづくりに取り組んだと聞いてます。若い時に海外で学んだことをぜひ今後に生かしてほしいと思います。震災から4年が経ちますが、復興への道のりはまだまだ険しく、震災の記憶や復興への想いの風化が心配されています。ありのままに皆さんの純粋でひたむきな気持ちを持ち続け、心が折れた時もしなやかに乗り越えていただきたいと思います。

ローラ・ウィンスロップ・アボット
TOMODACHI イニシアチブ 事務局長 公益財団法人米日カウンシル

みなさんは普段慣れている場所から一歩飛び出しただけで、すでに一つ成し遂げています。外国へ飛び立ったこと、英語を使ってみたこと、ほかの文化を体験したこと。皆さんは今までたくさんの yes に挑戦してきました。TOMODACHI プログラムに参加したことも一つの yes です。皆さんがyes というだけで新しいチャンスがうまれます。そのチャンスが皆さんをどこに連れていくのかは未知の世界です。皆さんがぜひこの yesを続けてくれることを願っています。

山崎直子
宇宙飛行士 一般財団法人教育支援グローバル基金 評議員

世の中には、さまざまな問題や課題がありますが、教科書の何ページを見てくださいということが言えない、答えがない問題が多いと思います。大人の私たちも毎日迷いながら考えています。だから、今の世の中で足りないこと、自分はこう思うということ、こうしたら良いのではないかないかということを一緒に考えて、共に成長して、共に学んでいける人になっていって欲しいと思っています。もうすでにその第一歩を踏み出されているみなさん、一人ひとりの勇気、ここまで来るのも大変だったと思います。まずその勇気に敬意を表したいと思います。

デーブ・スペクター
(株)スペクター・コミュニケーションズ 代表取締役  放送プロデューサー

東日本大震災が発生して4 年目になります。様々な問題が、山積しています。しかし、何もかもすべてネガティブに取ってしまってはいけない。この震災は、若い皆さん、或いはそうでない人たちにとっても、再出発という起爆剤になったのです。ですから、このチャンスをつかんで、逃さないことです。大切な方が今、天国で見守っていると思います。みんな期待されています。今日のみなさんのプレゼンテーションをお聞きして、非常に心強くなりました。いつも来るたびに感動します。

学生プレゼンテーション

9つのチームがそれぞれに、2 泊3 日の集大成として作成したアクションプランを発表し、ゲストの方々に投票していただきました。最優秀チームには、教育をテーマにアクションプランを作成したチーム8が選ばれました。チーム8は、教育を鉢植えの土に例え、その大切さを指摘した上で、「EDPOWER」というサイトを立ち上げて、教育を受ける側の要望を反映する、というアクションプランを発表しました。作成されたアクションプランは、提言として、外務省国際協力局審議官に手渡されました。

講評

豊田欣吾
外務省国際協力局審議官

今回の皆さんのプレゼンテーションをお聞きして、若い人たちが世界とのつながりを日常的に考えていると感じることができました。しかも、ただ考えているわけではなく、解決策を考えている。さらには、2030年に向けてどういうアジェンダが必要になってくるのか。そういうことを考えていただいたことに、非常に大きな感銘を受けています。こういう若い皆さんが、これからの社会を築いていかれるのだろうなと思います。

今回皆さんがテーマとされた人権、医療、教育といった分野は、人間の安全保障の理念に直結する分野であります。人権については、安倍政権が特に女性の人権と、社会参画を重視していることは、みなさんご存知のことと思います。今回のグローバル・リーダーシップ・アカデミー2015での経験を活かし、みなさん が国際社会で活躍する人材になることを期待しております。

学生代表スピーチ

震災の日、全てが終わったと思いました。しかし、震災が新たなスタート地点にかわりました。あの日、人生最大の悲しみを経験して、ビヨンドトゥモローに出会わなかったら、私は今でも井の中の蛙でした。今はすごく大きな、世界という海に少し、もう少しで出られるかもしれない、という感覚でワクワクしています。だからこれからもこのようなチャンスを生かし、たくさんの出会いを経験して、国際社会に貢献できる人間になりたいです。

ビヨンドのみんな。海岸部のみんなは、ともにつらい経験を共有し、共に涙を流したね。内陸部のみんな。深い 悲しみを抱え た私たちにどうかかわるべきか、悩み、考えてくれて本当に感謝しています。阿部 成子
宮城県佐沼高等学校3年

クロージングセッション

プログラムの最後、バンクオブアメリカ・メリルリンチの在日代表と社員の方々とのパネルディスカッションが開催されました。「将来の職業について」、「リーダーにとって必要なこと」、など参加学生たちの熱い質問に、パネラーの方々が真摯に応えて下さり、2泊3日のプログラムが幕を閉じました。

支援企業


バンクオブアメリカ・メリルリンチ

TOMODACHIについて

TOMODACHI イニシアチブとは、東日本大震災からの日本の復興支援から生まれ、教育、文化交流、指導者育成といったプログラムを通して、日米の次世代リーダーに投資する官民パートナーシップです。

ビヨンドトゥモローについて