TOMODACHI ビヨンドトゥモロー・グローバル・リーダーシップ・アカデミー2013開催報告
概要
一般財団法人教育支援グローバル基金は、2013年3月に、米日カウンシル・米国大使館を中心とする官民パートナーシップ「TOMODACHIイニシアチブ」の一環として、TOMDOACHIビヨンドトゥモロー・グローバル・リーダーシップ・アカデミー2013を開催致しました。2012年夏に、TOMODACHIイニシアチブの下に開催された各プログラムで渡米した学生約400名のうち、約70名が東京に集結し、3日間の対話・ディスカッション形式のプログラムを通してグローバル・アジェンダ(地球規模課題)について学び、その解決のために自らが果たせる役割について考えました。
目的
- 参加者たちが、世界をとりまく地球規模課題について理解を深め、必要とされるアクションについて議論、思考する。
- 参加者たちが、様々な領域で活躍するリーダーたちとの対話を通して、将来自分たちが果たしたい社会的な役割について考え、具体的なビジョンを描く。
- 異なるプログラムで米国滞在を体験した学生たちがTOMODACHI世代としてつながり、共に未来に向かって歩いていく仲間としての絆を深める。
日程・開催地
2013年3月8日~10日 国立オリンピック記念青少年総合センター(東京・渋谷区) コレド日本橋(東京・中央区) 東京アメリカンクラブ(東京・港区)
参加者
参加学生70名
2012年夏にTOMODACHIイニシアチブの下で渡米した東北出身の高校生・大学生70名。将来、グローバルに活躍するリーダーとなることを志す学生たちが書類審査によって選抜されました。
大学生チームリーダー9名
本アカデミーのために、日本全国から集まった9名の大学生たちが、プログラム期間中、各チームに配属され、様々な面からサポートを行いました。大学生チームリーダーたちは全員が長期留学の経験を有し、参加学生たちが視野を広げる機会をも提供しました。
チーム1 アナリン モーリス (名古屋大学大学院経済学研究科研究生) 2012年9月に来日。現在、フルブライトプログラムにて1年間留学中。高校時代には2007年秋からイスラエルで9ヶ月留学。さらに大学時代には2009年秋から甲南大学に9ヶ月留学も経験。様々な国際交流によって視野が広がることを体感し、将来は留学や国際交流プログラムの管理者を目指す。
チーム2 吉田淳(京都大学経済学部経済経営学科3年) 2012年1月よりスウェーデン・ウプサラ大学に1年間留学し、今年1月に帰国。アメリカとは経済・政治など様々な面で異なるスウェーデン留学での経験をTOMODACHI世代と共有したいと願い、本アカデミーの参加を決意。
チーム3 野田健太郎(一橋大学大学院経済学研究科修士課程1年) 福島県出身。学部時代に2010年夏よりアイルランド・ダブリンへ1年間留学。2012年夏には、ヒラリー・クリントン国務長官(当時)へのスピーチや第64回日米学生会議へ参加を経験する。人への投資こそ復興につながると考え、現在は米国大使館にてTOMODACHIのインターンを行う。
チーム4 大山浩志(京都大学文学部人文学科3年) 2012年2月から2013年1月までオランダ・ライデン大学に交換留学。趣味はバックパック。これまでに17カ国への渡航経験有り。これからも新しい出会いと経験を求めて世界を巡りたいと考えている。
チーム5 水岩宏(創価大学工学部環境共生工学科4年) 2011年3月よりアメリカ州立ワシントン大学に留学し、国際経営等を専攻。米国政府環境保護庁 (EPA)で3ヶ月間インターンシップを経験。現在の専門は環境土壌学。植物燃料の原材料として有名な植物(ジャトロファ)を扱い、土壌研究を企業と共同で実施中。将来の夢は、アフリカでの農業ビジネスを確立させ、世界に向けて植物由来の燃料を供給すること。
チーム6 飯島聡(国際基督教大学教養学部 アーツサイエンス学科1年) 高校2年次にアメリカ・ミシガン州に1年間留学。現在、大学ではフライングディスク部に所属。これからの世界を支える世代の一員として、自分にできることを着実に果たしていきたいと考えている。肌で感じたアメリカでの経験をTOMODACHI世代の学生と共有したいと願い、本アカデミーに参加。
チーム7 山根真理(宮崎大学医学部医学科5年) 高校1年次、YFUで盛田国際教育振興財団奨学生として、ドイツ・ニュルンベルクに1年間留学。大学3年次には第62回日米学生会議日本側代表、大学4年次には地域医療振興協会派遣のオレゴン健康科学大学家庭医療科にて3週間実習を経験。同年、米国財団法人野口医学研究所よりハワイ大学clinical reasoning workshopに参加。2013年6月、カリフォルニア大学アーバイン校にて宮崎大学留学生として、1ヶ月小児科実習予定。
チーム8 堀田信子(慶應義塾大学法学部法律学科4年) 2011年9月から1年間、オランダ・ライデン大学に留学。国際法や法と開発について学ぶ。自らの専門分野である法律を活かして途上国支援に関われることを探していた時に法整備支援という分野に出会い、卒業後は同分野で修士課程に進む予定。学生時代にはアイセック、国際会議、模擬国連、募金活動などの他に環境啓発団体を立ち上げるなど世界各国で活動。
メンター
本アカデミーの支援企業バンクオブアメリカ・メリルリンチの社員の方々が、メンターとして、各チームに参加しました。プレゼンテーションの準備や、社会人としてのキャリア形成など、様々な⾯で学⽣にアドバイスを頂きました。
スピーカー・専門家
学生たちがグローバル・アジェンダについて提言をまとめる上で、各分野において実際に活動を行っている団体のリーダーからインプットをいただくべく、インタビューセッションを行いました。エネルギー、食糧、水のそれぞれの分野で、実際に最も大きなニーズを抱える地域の人々に対して実際に活動をしているエクスパートがお越しくださいました。
プログラム概要
体験共有
各TOMODACHIプログラムの代表の学生に、震災での経験、そして米国での経験について共有してもらいました。
震災があった後で、精神的に弱っていたからこそ、アメリカへ行って、以前よりも生きる力が強くなったと思います。そしてアメリカでの経験を経て、私は将来、外国と日本を繋ぐ架け橋になりたいと考えるようになりました。
あの夏、TOMODACHIプログラムでアメリカに行った誰もが何か大きな大切なことを得たと思います。私たちには東北を、そして世界を変えていく力があると信じ、未来へ大きな一歩を踏み出していきたいです。
夏、アメリカに行ったことで、私には、ジャーナリストになり、人と人を言葉でつなぐ役割を果たしたいと考えるようになりました。この新しい夢を叶えることで、私は、誇りに思っている父が生きていたという証になりたいと思います。
失敗を恐れないことの大切さを教えてくださったアメリカの皆さんに感謝すると共に、今自分が置かれている状況にもひるむことなく進んで行きたい。
私は、震災を通じて支援をしていただくことを体験し、そのありがたさも十分に感じた者として、今度は自分たちが世界の困っている人の力になりたいと思います。
課題設定
テーマ:地球人口の増加と共に、不足が問題となっている、エネルギー・食糧・水、の3つの領域において、学生たちだからできるアクションにはどんなものがありうるか このテーマに基づき、参加学生たちは9チームに分かれ、実際に実現しうるアクションプランを策定し、最終日に発表しました。
- 何が問題なのか。
- 若い世代である自分たちに何ができるのか。
- 課題解決のために国際的な学生連合を創設し実施したい施策。
スピーカーセッション
レクチャー
チーム毎にディスカッションをするにあたり、グローバル・イシューとは何か、そしてなぜグローバル・イシューについて若い世代が考える必要があるのかについて、ダボス会議のグローバル・アジェンダ・カウンシルのメンバーでもある石倉洋子慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授によるレクチャーがありました(レクチャーは、日英両語によるバイリンガル形式で行われました)。
石倉 洋子 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
これから20年後、30年後にこの世界を握る若い人たちが、どのような世界を作りたいかということを自分たちで考えて、世界を作っていくということがとても大切だと思います。
専門家インタビュー
エネルギー 中村 俊裕 米国NPO法人コペルニク 共同創設者・CEO
発展途上国において電力は携帯電話の充電、浄水、調理、さらには教育機会の提供など様々な面から人々の生活水準を向上させる。電力は明かりだけでなく、新たな活躍の可能性をも提供する。
食糧 藤沢 久美 シンクタンク・ソフィアバンク 代表 特定非営利活動法人 TABLE FOR TWO International 理事 一般財団法人 教育支援グローバル基金 代表理事
社会貢献は、深刻に考えていると仲間が増えず、活動が広がらない。食は、貧しい人も裕福な人、どちらにとっても楽しみ。その延長線上に生まれてきた仕組みがTABLE FOR TWO。
水 木山 啓子 特定非営利活動法人ジェン(JEN) 理事・事務局長
発展途上国のある村で、安全な水へのアクセス改善がもたらしたこと―それは、子どもたちが遊ぶようになったということ。遊びは子供にとって心身の発育に大事なこと。それまでは、休み時間になってもお腹が痛くて活発になれなかった。水へのアクセスは、子どもたちに健康だけでなく、笑顔やより良い教育をもたらした。
留学セミナー
昨夏をアメリカで過ごした学生たちの多くは、次のステップとして、長期留学に関心を持っています。プログラム中には、現在留学中の参加学生や、留学経験を持つ大学生チームリーダーから体験談を聞き、また、留学団体の担当官から具体的な留学機会について話を聞くセッションを開催しました。
リーダーとの対話
様々な分野で活躍されているリーダーをお招きし、キャリアや、どのように社会に貢献していくべきかなどについてメッセージを頂きました。
石川 孔明 | NPO法人ETIC. リサーチ事業部 マネジャー |
宇多田 薫 | ビデオグラファー |
川添 高志 | ケアプロ株式会社 代表取締役 |
川辺 洋平 | 株式会社グレイプス 執行役員 / プロデューサー / イラストレーター |
高橋 大就 | 一般社団法人東の食の会 事務局代表 オイシックス株式会社 海外事業部長 |
玉川 努 | 社団法人Coffret Project 副代表 株式会社Lalitpur 取締役 |
照屋 朋子 | NGOゆいまーる 代表 |
中村 俊裕 | 米国NPO法人コペルニク 共同創設者・CEO |
ハリス 鈴木 絵美 | チェンジ・ドット・オーグ 日本代表 |
閉会式
プログラム最終日には、東京アメリカンクラブ(東京・港区)にて、学生たちが提言を発表するランチョンが開催されました。各界を代表するリーダーたちにご参加いただき、総勢200名が集う会場で、ゲストからのメッセージ、学生たちのプレゼンテーションなどが発表され、2泊3日にわたったプログラムの集大成を共有する時間となりました。
リーダーたちからのメッセージ
ジョン・V・ルース 駐日米国大使
皆さんは、はかり知れない悲劇の後で、自分たちが成し遂げたことを誇りに思うべきです。しかし、ここで終わりではありません。TOMODACHIプログラムに参加することで終わるのではなく、また、この3日間で成し遂げたことで終わるのでもありません。日米両国の将来のために努力をし続けて下さい―これ以上に重要な関係はないのですから。
ティム・ラティモア バンク・オブ・アメリカ・エヌ・エイ 東京支店長
ここにいる学生の皆さんは、昨年の夏、TOMDOACHIサマープログラムを通じて、アメリカ各地でホームステイなどをしながら、英語研修や文化交流活動、大学訪問等、様々な経験をしたと聞いています。アメリカでの滞在を通じて異なる文化に触れた皆さんが、そこから発展し、今度は自ら進んで、このグローバル・アジェンダに取り組むプログラムに参加してくれたことに、本当に嬉しく思っています。
デーブ・スペクター 株式会社スペクター・コミュニケーションズ 放送プロデューサー
「一期一会」という言葉がありますが、このアカデミーや、アメリカで出会った人たちも一期一会です。私も全く日本とは縁がありませんでした。ところが、小学校5年生の時に、私の学校に転向してきた日本人と仲良くなり、これが日本語を覚えるきっかけになります。そして後々、妻との出会いがあります。全てそのようなちょっとした出会いからです。皆さん、ここでの出会いを大切にし、日本の未来を創っていってください。
学生プレゼンテーション
9つのチームがそれぞれに、2泊3日の集大成を閉会式で発表し、テーブル毎に一票という投票方式で、最優秀チームが選ばれました。「水」をテーマにアクションプランを作成したチーム9が最優勝賞に選ばれました。 【チーム9によるプレゼンテーション抜粋】
学生代表スピーチ
鈴木真奈美(仮名) Leelanau School(米国・ミシガン州)
家族が私に残してくれた思いや意思を胸に、与えられたチャンスを大切に、自分の可能性を信じ、そして何よりも自分の気持ちに素直に生きていきたいと思います。
リフレクション
2泊3日の最終日には、バンク・オブ・アメリカ・グループの在日代表との対話セッションが開催され、プレゼンテーションへの講評や、参加学生へのメッセージを頂きました。
瀬口二郎 バンク・オブ・アメリカ・グループ 在日代表 メリルリンチ日本証券株式会社 代表取締役社長
皆さんアメリカへ行って、さらに今ここで得た経験を活かそうと決意している、そのこと自体が世界のリーダーへの第一歩です。これからも皆さん自身の action、action、action という今のこの気持ちを、このプログラムで経験したことを思い出し、「自分だからこそできること」をずっと考え続けてください。そうすることで自然に世界に羽ばたくリーダーになっていけると思います。そんな皆さんのことを、これからも応援したいと思っています。
メディア掲載
- 新聞
- 「震災伝える 海を越えて」(2013年3月9日 朝日新聞)
- 「3/11 students vow leadership roles」(2013年3月13日 THE JAPAN TIMES)
- 「Tomodachi program lets youths dream anew」(2013年3月16日 THE JAPAN TIMES)
- テレビ
- 「ワイド!スクランブル」(2013年3月15日 テレビ朝日)
- 「海外ネットワーク」(2013年3月23日 NHK総合)
支援
バンクオブアメリカ・メリルリンチ