公益財団法人教育支援グローバル基金|ビヨンドトゥモロー

「自分を守るお金の知恵 ~経験者と専門家に学ぶセミナー~」開催報告

 

奨学金運営団体が連携して開催

社会的養護を経験された方への奨学金制度を運営する5つの団体が協働し、社会的養護を経験した学生の皆さんを対象としたセミナー「自分を守るお金の知恵~経験者と専門家に学ぶセミナー~」を2025620日(金)にオンライン(YouTube限定配信)で初開催しました。

 

【実施団体】

一般財団法人ゼンショーかがやき子ども財団

NPO法人モバイル・コミュニケーション・ファンド

公益財団法人資生堂子ども財団

社会福祉法人朝日新聞厚生文化事業団

公益財団法人教育支援グローバル基金

 

安心して学ぶために

私たち奨学金を運営する団体は、施設などを離れるのと同時に、これまでの貯金や奨学金を一度に手にし、お金の使い方に不安を感じたり、大きな失敗してしまったりする学生に接することがしばしばありました。

こうした学生たちの金銭的な不安や「大きな失敗」を未然に防ぎ、安心して学び、将来に向けて歩む一助になればと、社会的養護を経験した主に1年年の学生の皆さんを対象に本セミナーを企画しました。

準備段階から、セミナーの目的に共感した先輩学生や社会人も参画し、アコム株式会社にもご協力いただき、開催当日を迎えました。

先輩たちと専門家で

本セミナーには、30人を超える学生と奨学金運営団体の関係者などから申し込みをいただき、当日は、「経験者による体験談」、「専門家(アコム株式会社)によるご講演」、そして「パネルディスカッション」の三部構成で実施しました。

 

第一部:経験者による体験談

社会的養護を経験した先輩学生・社会人4名が登壇し、「失敗談」、「貯金」、「節約」のテーマで自身の経験を共有しました。

失敗談では、ネットショッピングでの衝動買いや趣味への過剰支出、節約意識が強くなりすぎてしまったことなどが語られました。

貯金については、目標設定(例:海外旅行、将来のペットとの生活)の重要性や、口座の使い分け、少しずつの貯蓄が有効であると紹介されました。同時に、「お金を貯めることも大事だが、使うことにも経験や学びの価値がある」という視点も紹介されました。

節約については、食費を削るような「何かをしない節約」ではなく、電気会社や通信会社の契約見直し、省エネ家電への投資といった「何かを行うことによってする節約」が推奨されました。また、「人との付き合いは最終的に人間関係が残るため、お金を使う以上に大切なこと」という意見もありました。

第二部:アコム株式会社による講演

アコム株式会社の前田望さんに、金融リテラシーの基礎知識から金融トラブルへの対処法などについてご講演をいただきました。

金融リテラシーに関するクイズでは、口約束でも契約が成立することや、高リターンをうたう情報に惑わされず多角的な情報収集の必要性が示されました。

若年層に多い金融トラブル事例として、「マルチ商法」と「名義貸し」が紹介され、またマッチングアプリやSNSを介して近づき、「絶対に儲かる」話や「簡単なアルバイト」を装い、高額な契約や消費者金融からの借金を促す手口が具体的な動画を交えて解説されました。

トラブル回避のための注意点として、「簡単に儲かる話はないこと」「安易なクレジットカードの高額決済や借金は避けること」「実態や仕組みが理解できない契約はしないこと」などが挙げられました。「万が一トラブルに巻き込まれた場合は、消費生活センターや警察総合相談窓口への早めの相談が有効」で、消費者契約法やクーリングオフ制度といった消費者を守る法律についても説明がありました。

 第三部:パネルディスカッション

学生パネリストとアコム株式会社の藤澤成典さんが、「投資」、「クレジットカード」、「貸与型奨学金」の3テーマで質疑応答を行いました。

藤澤さんは、学生が投資を始めるメリットとして「複利効果」と「金融知識の向上」を挙げつつ、「学生時代は勉強に集中し、社会人になってから余裕資金で始めるのが望ましい」との考え方を紹介。「物価上昇と低金利によるお金の価値の目減り」と資産形成の観点からNISAiDeCoにも触れ、「分散投資」と「長期投資」がリスクを減らすために有効であると説明しました。同時に、「安全で儲かる商品は存在しない」という原則についても話がありました。

クレジットカードの仕組みでは、後払いであること、支払い方法(一括、分割、リボ)の違い、特に金利が発生する分割・リボ払いの注意点が解説されました。利用に際しては、「本当に必要なもの」と「欲しいもの」を明確に区別し、冷静に判断する重要性が語られました。

貸与型奨学金に関しても、そのメリットとデメリットについて質疑応答がありました。

 

参加者の声

終了後のアンケートでは、「体験談が分かりやすく説得力があった」「クレジットカードや投資などの知識を身につけ、お金の管理を考えるきっかけになった」「詐欺に注意しようと思えた」などの感想が寄せられました。

 

 登壇したビヨンドトゥモロー元奨学生の感想

今回、第三部のパネルディスカッションでは、ビヨンドトゥモローの元奨学生2名が学生代表として登壇し、専門家への質疑応答を行いました。学生が疑問に思う点の質問や、学生が気を付けるべきポイントを分かりやすく伝えるなど、若者に届きやすい内容を準備段階から検討してきました。

元奨学生の感想

「団体の垣根を超えて、自分たちの経験を参考にして、未来の後輩のために自分たちが何をできるだろうか、という思いを共有して準備を進めてきました。そして、団体だけでなく、学生・社会人という年齢の垣根もこえ、それぞれの立場だからこそ見える意見や思いを取り入れることができたと思います。金融といっても、幅広く様々なトピックがあります。だからこそ、こうしたイベントで入門編という形で、お金の諸側面のうちの一部を示すことができるのならば、素敵なことであると感じました。」

「ビヨンドトゥモローで実施するような活動を他の団体の学生と共同で行うことは初めてでしたが、自分たちの経験を役に立てたいという思いが強い軸になったことで短い時間でも最大限の会にすることができました。また、お金セミナーという会についても、失敗してから気付くことの多い金融に関する知識を学べる場としてとても良い企画だと思いました。ぜひ来年度以降も続けていただきたいです。」

 

これからも社会的養護経験学生を継続支援

本セミナー全体を通じて、先輩の経験談から具体的なお金の失敗と成功のヒントを、専門家からは金融トラブルの具体的な事例と回避策、そして現代社会における投資の必要性といった、多岐にわたる「自分を守るお金の知恵」を学んでいただけたものと考えています。

社会的養護を経験された学生の皆さんが、経済的に自立し、安心して未来を築いていくための第一歩となるよう、今後もこうした活動を継続し、皆さんがより安心して豊かな人生を歩んでいけるよう努めてまいります。

 

本セミナーにご参加いただいた学生の皆様、企画運営に携わってくださった団体や(現・元)奨学生の皆様に感謝申し上げます。

 

 

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