公益財団法人教育支援グローバル基金|ビヨンドトゥモロー

コロナ下における社会経済的に厳しい家庭の現状とビヨンドトゥモローの取り組み

新型コロナウイルスの影響で、児童養護施設で生活する子どもや社会経済的に弱い立場にある家庭で生活する子どもが厳しい状況に置かれています。ビヨンドトゥモローは、この厳しい状況でどのように若者を支援することができるか考え、目指す社会の実現に向けて取り組みを進めています。

コロナ下における課題意識

新型コロナウイルスの影響で、社会経済的に弱い立場にある家庭で生活する子どもがこれまで以上に厳しい状況に置かれているという課題意識があります。

厚生労働省の緊急調査によると、児童相談所が児童虐待として対応した件数が、2020年の1月~4月の期間で前年に比べると2割増えていることがわかっています。これは、いわゆるコロナ疲れによって保護者のストレスが子どもに向かっていることが1つの要因と考えられます。

また、児童養護施設で生活している子どもの外出規制はかなり厳しく、施設の敷地内から一切外に出れない状況にある子どもたちも多くいるのが現状です。さらに、児童養護施設出身者は、原則18歳になると施設を出なければならず、頼れる場所や人がいません。そのため、新型コロナウイルス(以下、コロナ)下では、経済的・精神的に孤立しやすい状況が生まれています。

それ以外にも、社会的・経済的に弱い立場にいる子どもたちは、自分が守ってもらう側ではなく、兄弟や両親を守らなければならない立場であることも多く、安心安全な環境とは正反対の厳しい状況に置かれています。

参考
児童虐待対応、1~4月は12%増え6万6000件…コロナ疲れも一因か|読売新聞オンライン

コロナ下におけるプログラム参加学生の声

ビヨンドトゥモローに参加している学生に話を聞いたところ、学校の授業がオンラインになることやアルバイトが減ることによる経済面の不安がある一方で、ビヨンドトゥモローの参加者同士で積極的に交流していきたいという前向きな意見も聞くことができました。

就職できるのか不安に感じる。今年度は卒業しないであえて留年を選ぶという先輩もいる。

大学の授業が全てオンラインになり、周囲の友だちが実家に帰省して過ごしている中、自分には帰る家がないことをむなしく感じたこともある。

コロナによって大学の授業はオンライン化され、アルバイトも少なくなって、人とリアルの場で会う機会がない。地方から大学に通うために上京してきたので、周りに悩みや不安を相談できる友人もいないため精神的に不安を感じる。

まだビヨンドトゥモローのメンバーと対面したことがないので、できれば集まって関係を築いていきたい。Zoomで話すことはあっても、プログラムが終わってしまったらまた一人になってしまうので、純粋に仲良くなれる場があるといいなと思う

コロナの影響で家計状況が悪化し、アルバイトを増やして家計を支えているが、オンライン授業の課題も多く、暮らしが厳しくなっている。

コロナ座談会の様子はこちら▼
【学生対談@Zoom】コロナで授業はどうなった?アルバイトは?生活はできてる?

ビヨンドトゥモローの活動はオンライン化するも本質は変わらない


ビヨンドトゥモローは、参加学生に対してオンラインで取り組みを行うことで社会とのつながりを強め、成長の場を提供していきます。

コロナの影響によって、ビヨンドトゥモローの活動がはじまって以来初めて、参加学生がリアルで対面することなく1年間のプログラムがスタートしました。その一方で、ビヨンドトゥモローの本質は参加学生に伝わっていると実感しています。

例えば、これまで誰にも話すことができなかった生い立ちやつらい経験をグループの中で共有する時間は、リアルで対面して話すことの良さもありますが、「経験を話すこと」そのものに価値があり、オンラインでもこれまでと同じように刺激を受けていると感じています。

また、オンラインでプログラムを実施するメリットの1つに「地理的な制約がなくなったこと」が挙げられます。これまでは、プログラムに参加する日本全国に住む学生を1つの会場に集合させるための交通費や宿泊費の確保が必要でした。しかし、オンラインツールを活用することで、コスト面の負担が軽減され、年間2,3回のプログラム実施ではなく、継続的に高頻度でコミュニケーションを取ることが可能になります。

さらに、参加学生だけでなく、プログラムに参加していただく各分野の第一線で活躍する方々も世界各地から参加しやすいという状況が生まれています。

コロナ下でのビヨンドトゥモローの取り組み

6月末までにビヨンドトゥモローが実行している取り組みは大きく4つあります。

  1. オリエンテーション@オンライン
  2. 提言作成@オンライン
  3. フェローシップ・プログラム@オンライン
  4. タブレットの貸し出し

オリエンテーション@オンライン

オリエンテーションは、2020年3月に実施しており、4日間で28名の高校生、大学生などが参加しました。急遽、オンラインでのプログラム実施となったため、オンライン環境を整えるという課題がありました。その課題に対しては、これまでビヨンドトゥモローのプログラムに参加してきたフェローズ(フェローシップ・プログラム参加学生)がリーダーシップをとり、オンライン環境の整備や円滑なプログラム実施ためのコミュニケーション形成を行っていきました。

提言作成@オンライン

提言作成は、2020年5月に実施しており、エンデバー・プログラム、スカラーシップ・プログラム、フェローシップ・プログラムの3つのチームがオンラインツールを活用して各2日間ずつ議論を重ね、最終的に各チームで作成した提言をプレゼンテーションするにまで至りました。こちらもオリエンテーションに参加した合計28名の高校生、大学生などが参加しています。

フェローシップ・プログラム@オンライン

フェローシップ・プログラムに参加するフェローズは、「マーケティング/プロモーション」「10周年企画」「プログラム運営」の3つのタスクフォースに分かれて、学生が主体となりビヨンドトゥモローの活動運営の一部を担っています。5月の提言作成をキックオフとして、継続的に各タスクフォースのプロジェクトがいまもオンラインで進められています。

ジャパン未来フェローシップ・プログラム 2020 参加者

タブレットの貸し出し

参加学生がプログラムをオンラインで受信できるようにするために、ハード面でのサポートとしてタブレットの貸し出しを行っています。2020年6月末時点で、合計14台のタブレットを参加学生に貸し出しており、オンラインでのプログラムに参加できる環境を整えています。(今後は、全参加学生に貸し出し予定です)

ビヨンドトゥモローが目指す社会

社会には様々な人がいます。どんな人も共に社会を構成しており、異なる背景や価値観を持つ人たちが共に意思決定を行うことで、はじめて健全な民主主義社会の実現が可能になります。この社会をカタチ作っているすべての人が、お互いを尊重する態度を持つためにビヨンドトゥモローの活動があります。

社会をカタチ作っている私たちひとり一人が、これまで知らなかった世界を知ることで、物事の見え方が変化し、正解が1つではないことに気付きます。この気付きを得るのは、プログラムに参加した学生だけではなく、逆境に置かれた若者の経験や成長に触れた方々も同じだと考えます。

ビヨンドトゥモローのプログラムは、逆境に置かれた若者だけのものではありません。社会的弱者と言われる若者がどのような経験をし、どのように今を生き抜いているかを知ってくださった方、関わってくださった方のものでもあります。

コロナ下における生活の変化は決して緩やかで優しいものではありません。だからこそ、共に社会をカタチ作っている若者の現状を知り、より多くの人が幸せだと感じることができる社会にしていきたいと思っています。

ビヨンドトゥモローは、逆境を経験した若者を支援しています。これからの社会を創っていく若者のために、ぜひご支援をお願い致します!
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