ビヨンドトゥモロー 大学スカラーシップ・プログラム
東北被災地からリーダーを輩出
1.概要
ビヨンドトゥモロー・大学スカラーシップ・プログラムは、震災・津波という困難を乗り越え、将来、社会に貢献したいと考えるリーダー候補の学生を包括的に支援します。 芸術やスポーツ、経済や政策、漁業や農業など、幅広い領域において活躍できる人材育成を目標とし、トップ大学への進学を目指すだけでなく、社会貢献への意欲と情熱に溢れた学生を対象としたリーダーシッププログラムを提供します。
2.ビヨンドトゥモロー・大学スカラーシップ・プログラム内容
奨学金
学費・生活費を含む奨学金を提供。入学・在籍に必要な学費全額および生活費、入学一時金を返済不要・給付型奨学金として提供。
リーダーシッププログラム
各界で活躍するリーダーとの対話、被災・復興の伝道師としての国内外への情報発信、海外でのプログラム、企業訪問などを通し、東北からリーダーを輩出するためのプログラムを実施しています。
3.選考プロセス(2012年度選考の場合)
本プログラムは、学業のみならず、人格や思考力、東北を代表して発信する意欲、震災という逆境を乗り越えて社会に貢献する志など、多角的な面において最も優れていると判断された学生を選出しております。2012年度選考においては、課題作文による1次選考及び、グループディスカッションによる2次選考が開催されました。
支給対象者(応募は終了しております)
東日本大震災により被災し、岩手・宮城・福島のいずれかの県に居住していた学生であり(震災後、他の都道府県に転校した生徒も対象)、2012年3月までに高等学校またはそれに準ずる学校を卒業し、2012年4月~2013年3月に新たに大学・短大・各種学校に進学予定の方を対象としました。
*震災による被災度合いがより高い者は優先的に配慮しました。
選考プロセス
1次選考:書類審査(2つの課題作文と学校長の推薦状)
2012年度課題作文テーマ
- 課題1(2000字~4000字)
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- 東日本大震災が、自分にどのような影響を与えたか
- 震災の体験をもって、将来はどのような道に進みたいか
- ビヨンドトゥモロー・大学スカラーシップ・プログラムが、その夢の実現のためにどのように役にたつのか
- 様々な奨学金プログラムの中で、なぜ、ビヨンドトゥモロー・大学スカラーシップ・プログラムを希望するのか
- 課題2(2000字以内)
- 自身が尊敬するリーダーを一人選び(著名人、身近な人、いずれでも良い)、なぜその人を尊敬するのか、また、自身が考える「リーダーシップ」とは何か
2次選考:面接審査
グループ面接にて、自分の役割がどこにあるのか、自身のミッションについてディスカッションを行いました。
日程:2011年12月17日(土)、18日(日)
2012年度ディスカッション内容
あなたは、大学生になり、ボランティアのサークルに入っています。サークルでは、夏休みを使って、ボランティア活動を行うことになり、 その内容を多数決で決めることになりました。あなたはどちらから選びますか?
- 選択肢① アフリカに行って、経済的に恵まれない人や、十分な教育や食料のない子どもたちに支援を行う。
- 選択肢② 日本のホームレスへの支援を行う。
サークル内では、「遠くのアフリカの国に支援を行うべきか」「身近な自分の国である日本に支援を行うべきか」で意見が割れています。 2つの選択肢から、あなたは必ずどちらかを選ばなくてはなりません。どちらか を選んだ上で、選んだ理由や、迷った点など、整理して発言することが可能です。
4.ガバナンス/体制
奨学金委員会
本プログラムの選考は、奨学金委員会によって監督されました。(敬称略)
- デビッド・サターホワイト
- フルブライト・ジャパン(日米教育委員会) 事務局長
- 渋澤健
- シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役CEO
選考委員会
二次選考は、下記の選考委員により開催されました。(敬称略)
- 岡島悦子
- 株式会社プロノバ 代表取締役社長(ビヨンドトゥモロー発起人)
- 草原克豪
- 拓殖大学名誉教授
- 高田祐三
- AFS日本協会理事・事務局長
- 松古樹美
- 野村ホールディングス コーポレート・シティズンシップ推進室長 マネージングディレクター、 ニューヨーク州弁護士(ビヨンドトゥモロー発起人)
5.プログラム参加者
2012年度大学スカラーシップ・プログラム参加者は、下記のとおりです。
阿川夏未 帝京平成大学健康メディカル学部1年(宮城県気仙沼高等学校卒業) 宮城県南三陸町で被災。母と一度は高台に避難したものの津波にのまれ、自身は奇跡的に一命をとりとめたものの、最愛の母を亡くす。震災を経て、救命士である父の影響を受けて志した職業である臨床工学技士の資格を取得できる大学に進学を決意。大学生活では、途上国の貧困や飢餓問題の解決にも貢献すべくNPOの活動などにも参加したい。津波で命を絶たれた母の無念さを心に置きながら、他の辛い思いを抱えている誰かに寄り添い、夢を与えられる人になりたいと考えている。
高井友理 (小林正忠特別奨学生) 慶應義塾大学法学部1年(岩手県立盛岡第一高等学校卒業) 震災を通して、この未曾有の大惨事を経験したからこそ得られた、人に対する思いやりの心や共感力を持って、人々に元気を与えられる、視聴者に寄り添ったアナウンサーになりたいと強く思うようになった。東北の生の声を発信し続け、何年かかっても必ず愛する故郷を取り戻すこと、自分たちこそが日本を引っ張っていくリーダーになること、それが支えて下さっている全ての方々への恩返しとなると考え、震災のことをより多くの人に発信し続けていきたいと考えている。
藤川美代 石巻専修大学経営学部1年(宮城県石巻北高等学校卒業) 震災で父と家を亡くし、絶望の淵におかれる思いをしながらも、震災のことを多くの人に知ってもらいたいと、写真部の部長として活動した経験を活かして、被災地における津波の爪痕を写真に残し、メディアを通して発信したという経験を持つ。震災を経験した者として、被災地の「今」を発信していきたいという意欲を持ち、未来においては「今」を「過去」にすることなく、生きている瞬間を心に刻み続けられるような活動をしていきたいと考えている。
小野里栄子 早稲田大学商学部1年(仙台育英学園高等学校卒業) 震災により、気仙沼の家を失う。悲惨な震災が自らの人生の良い転機だったと思えるよう、震災を経験した自分たちだからこそできることを模索し、「社会貢献」の精神を持って世の中を良くするために積極的にアクションを起こしていきたいと考えている。将来は、国際機関における開発途上国の支援や国づくり、国際ビジネスなどに携わる、海外で活躍できる人材になることが夢。
佐藤秀樹 (小林正忠特別奨学生) 慶應義塾大学環境情報学部1年(東陵高等学校卒業) 気仙沼で被災し、家を失くす。両親が経営していたホテルは避難所となり、大学生ボランティアと共に、被災者支援活動に参加する。震災半年後の9月には、東北被災学生代表として、夏季ダボス会議に参加し、東北の状況について世界のリーダーたちを前に発信。将来は、自らが被災者であるという立場を活かし、自分と同じような境遇の人たちの経済状況を十分に把握した上で町づくりをしていきたいと、地元気仙沼の復興に携わりたいと考えている。
白澤知也 (住友化学特別奨学生) 東北大学農学部1年(岩手県立盛岡第一高等学校卒業) 「農業」をキーワードに日本国内のみならず、世界における貧困問題を解決できるような支援のあり方を模索していきたいと、農学部へ進学を決意。大震災での経験を自身の心の中に留めておくのではなく積極的に発信していきながら、仲間と一緒に大きく成長していき、その結果として、被災地の方々へも希望をもたらせるような活動をしていきたいと考えている。そのために、大学での勉強はもちろん、ビヨンドトゥモローのプログラムに参加して自分の夢に向かって遭進していきたいと考えている。
菊田翔平 (三菱重工業特別奨学生) 東北学院大学法学部1年(岩手県立大船渡高等学校卒業) 震災直後、地域ボランティア活動に参加していた際に、震災から時間が経っていないにも関わらず、大船渡の人々が立ち止まることなく復興のために動き出そうとしている姿を見て、大船渡の強さを痛感する。将来は、「人のためになる仕事をしたい」と考えているが、大学生活中にその夢を具体化したいと、被災という経験を忘れずに、積極的に様々な活動へ参加したいと考えている。
菊川将志 筑波大学社会・国際学群1年(岩手県立高田高等学校卒業) 陸前高田市で被災し、両親を亡くす。高校では生徒会長としてリーダーシップを発揮、震災後には、第14代高校生平和大使としてスイスの国連欧州本部を訪問した。震災で世界より多くの支援が寄せられたことから国際連帯の重要性を感じ、世界に防災の必要性を発信していくことが日本の今後の使命であると考えている。将来の夢は、陸前高田市の市長となり、被災地の復興を先導する立場になること。特に、多くの人が職場を失い、経済的困難にあえぐ状況に強い危機感を覚え、雇用問題の解決に貢献したいと考えている。
倉田千恵 (三菱重工業特別奨学生) 明治薬科大学薬学部1年(岩手県立盛岡第一高等学校卒業) 震災で家を失ったが、母親や、地域の人々が復興に向けて頑張る姿を見て、自らも何らかの力になれるようになりたいと考えるようになった。震災を通じて、人々の健康を守る薬を届ける薬剤師という仕事の重要性を痛感し、薬剤師になるという夢がさらに確固たるものになった。4月から薬学部に進学し、夢である薬剤師を目指す。今後、新しい生活の中で得られるであろう知識やあらゆる人たちの経験、思いを社会貢献に活かせるよう頑張りたいと考えている。
三田凛子 拓殖大学国際学部1年(宮城県気仙沼高等学校卒業) 中国・大連生まれ。中学校1年生の時に、母の再婚により来日。以来、南三陸町に住む。震災で家を失くしたが、自分の故郷は南三陸町にあると確信し、日本国籍を取得。震災を通じて、「教育」「情報」の大切さを知り、アフリカの貧困地域で教育を普及させ、より多くの子どもたちが夢を実現できる社会作りをしたいと考え、アフリカにおいて人材養成を行う非営利団体を設立したいと考えている。一方で、愛する故郷である三陸の復興に貢献できるような活動にも携わりたいと思っている。
佐伯仁美 米国Foothill College(宮城県気仙沼高等学校卒業) 気仙沼で被災し、家を失う。同じ人間でありながら、生まれた場所によって人生が大きく変わってしまうという地球上の不公平に衝撃を受けた中学時代の経験から、途上国の支援など、世界のために働くことが夢。夢の実現のために、語学力とグローバルな視野を得るべく米国での進学を決意。国際関係論を学び、人身売買や貧困、飢餓といった地球規模課題の解決に貢献したいと考えている。
武藤彰 (三菱重工業特別奨学生) 高崎経済大学地域政策学部1年(岩手県立盛岡第一高等学校卒業) 震災を経て、被災した人々の声が未曽有の大災害の生き証人の言葉として多くの人に伝わることが、震災を風化させないための鍵であると考え、被災者の声を広く発信する伝道師としての役割を担いたいと考えている。将来は、東北の観光復興に携わることで、地域活性化や産業促進に貢献したいと考えている。そのために広い視野を持ちたいと、大学では留学し、グローバルに通用する信念と発言力をもった人材になることが夢。
菅矢翼 宇都宮大学国際学部1年(福島工業高等学校卒業) 震災で世界の国々から支援が寄せられたことから、国際協力の重要性を感じ、自らが国際社会に貢献できる存在になりたいと考えるようになった。日本だけでなく世界各地で貧困や紛争で苦しんでいる人々が明日への安心を持てるような社会構築を学ぶために、国際関係学を学ぶことを決意。大学在籍中には、ヨーロッパに留学し、視野を広げたいと考えている。また、被災者として、自然災害の恐怖や東北の力強さについて世界にむけて発信していきたい。
小林隆 宇都宮大学工学部1年(岩手県立大船渡高等学校卒業) 大船渡にて被災。津波によって母親と祖母を亡くし、家も流された。現在は父親と二人の弟と一緒に大船渡の賃貸住宅で生活している。多くの命が犠牲になった中で自分は助かったという経験から、将来は地元の復興と、自然災害に備えた街づくりに貢献することが生き残った者の使命であると考えている。三陸沿岸地域の災害に強い街づくりに参加し、復興に関する事業を行う会社を立ち上げたいと考えている。
谷本順子 (三菱重工業特別奨学生) 宮城大学看護学部1年(岩手県立高田高等学校卒業) 陸前高田で被災し、家を失くす。将来は、生まれ故郷である陸前高田の街に戻り、人々の笑顔を守ることのできる保健師になることが夢。震災後、進学を諦めかけたこともあったが、もっと日本を、世界を知りたいと進学を決意。将来、保健師として陸前高田の街に貢献できるような人間になるべく様々な経験を積みたいと、大学生活を通して新しいチャレンジに取り組んでいきたいと考えている。
氏家信二 神奈川大学法学部1年(神奈川県立岸根高等学校卒業) 宮城県気仙沼で被災し、家を失ったため、神奈川県に避難、家族と離れて神奈川県で高校に通った。13年間続けてきた水泳が心の支え。震災後9月には、山口県で行われた国民体育大会で宮城県代表として出場し自己新記録で12 位。大学進学後は全国大会に出場し、日本一の選手になるという夢を持っている。将来東北を担うリーダーになれるように成長していきたいと考え、将来は、復興のために地元・気仙沼に帰り、若者が出て行くのを減らせるような会社を同じ志を持つ仲間と共に立ち上げることが夢。
船井絵里 早稲田大学文化構想学部1年(岩手県立宮古高等学校卒業) 震災で祖母や親戚を亡くす。震災後、自らにできることを考えた際に、「知る」ことの重要性を感じ、地元のラジオ局の災害FMの開設をボランティアスタッフとして手伝った。その体験から、情報を提供することで多くの人が様々な問題について考え、実践に移していく機会を作ることのできる職業としてアナウンサーを志す。また、震災を経て強く感じた、故郷である宮古への強い愛情から、東北および宮古地区の状況について幅広く発信することのできるアナウンサーになりたい。
スミスデイビッド涼雅 早稲田大学法学部1年(宮城県仙台第一高等学校卒業) 医師としてインドの農村医療に従事した父について幼少期をインドで過ごした経験を持ち、電気や水道のない貧困層の生活を目の当たりにする。今回の震災で、先進国が窮地に陥る状況を体験し、今回の被災経験を活かして世界全体のポリシーについて考え、国家の枠に囚われず、グローバルな問題の解決に取り組みたいと考えている。将来は米国の大学院に進学して法曹資格を取得し、法という枠組みから社会問題の解決に貢献したい。
細川博美 (三菱重工業特別奨学生) 東北公益文科大学公益学部1年(福島県立相馬東高等学校卒業) 背後にせまりくる津波から逃れるために走っている最中に、通りがかりの人に車に乗せてもらうことができたために危機一髪で命拾いをしたという経験をもつ。震災で家を失い、父は失職。音楽大学に進学するという夢をあきらめ、就職を考えたが、将来は街づくり、地域活性化について学び東北復興を担う人材になるという新しい目標の実現のためにスカラーシップを得て進学を決意。東北の被災地が早く復興するように、全力で頑張り、被災地が安全で良い街になるよう仲間たちと力を合わせていきたいと考えている。
山田瑠璃子 フィジー国立大学(仙台白百合学園高等学校卒業) 震災後、福島県の自宅から仙台に避難し、高校生活を送る。将来は、小児甲状腺がんや白血病など原発事故によって引き起こされる病気のリスクから、福島に住む子供達の健康を守ることのできる看護婦になりたいと考えている。また、世界中で苦しむ人々を救うために、グローバルに活躍できる看護師になりたいと、国際的な経験と英語の習得のためにフィジーの大学に進学。福島県で、夢や目標を持っている子供達が健康でいられる未来を作る手助けをできる人間になることが夢。
以上20名(※学生の氏名は全て仮名にしています)