公益財団法人教育支援グローバル基金|ビヨンドトゥモロー

ビヨンドトゥモロー 東北未来リーダーズサミット2013

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報告書(PDF)

概要

ビヨンドトゥモローは、第三回開催となる東北のリーダーシッププログラム「東北未来リーダーズサミット2013」を開催しました。本サミットは、東日本大震災により被災し、困難な状況を経験しながらも、グローバルな視野を持ち国内外で活躍する志をもつ若者を対象としています。書類選考により選ばれた59名の高校生と、自らも東日本大震災を岩手・宮城・福島のいずれかの県で体験し、ビヨンドトゥモローの活動に継続的に参加して、未来へ向かいそれぞれの社会的アクションを起こしている22名の大学生が、様々な領域で活躍するリーダーたちによるアドバイスの下、東北の復興のあり方について、チーム毎に提言をまとめました。震災・津波という困難を経験したからこそ、他者への共感をもって広い社会のために行動を起こすことができる人材が出てくるという信念のもとに、このサミットでは参加学生が、逆境を乗り越えて果たすべき社会的な役割について考え、アクションに移すきっかけを提供しました。

目的

  • 「東北の未来への提言」を策定する
    自らの経験や周囲の人々の声に基づき、東北の復興の在り方について議論し、提言として発表する
  • 様々な領域で活躍するリーダーとの対話を通し、自らの将来のビジョンを具体的に描く
    各界のリーダーとの対話を通じて、震災・津波を経験した自分たちだからこそ、広い社会で果たすべき役割について考える
  • 志を共にする仲間と議論し、意見を交わすことで切磋琢磨の機会を持つ

日程・開催地

2013年10月12日~14日
国立オリンピック記念青少年総合センター(東京・渋谷)

参加者

参加高校生

東日本大震災の際に、岩手・宮城・福島のいずれかの県に居住しており、震災を乗り越えてグローバルな視野を持ち国内外で活躍するリーダーになることを志す高校生59名。(書類選考で選出)

フェローズ

『ビヨンドトゥモロー東北未来フェローズ・プログラム』に参加する大学1年生11名が、高校生のチームにチームリーダーとして加わり、2泊3日参加高校生と向き合い、サポートしました。

スカラーズ

『ビヨンドトゥモロー・大学スカラーシップ・プログラム』に参加する大学2年生11名が、独自のチームを作り事例研究に当たり提言をまとめると共に、フェローズのアドバイザーとして後進の育成に臨みました。

提言アドバイザー

様々な知識と経験を持つ提言アドバイザーが、各チームをサポートしました。参加学生たちの体験と思いの共有、そしてそれらを基盤とした東北の未来についての議論をサポートし、具体的な提言へと導きました。

岩瀬大輔
ライフネット生命保険株式会社 代表取締役社長兼COO
岡島悦子
株式会社プロノバ 代表取締役社長
籠島康治
株式会社電通 ソーシャル・デザイン・エンジン クリエーティブ・ディレクター
杉山大輔
株式会社インターリテラシー 代表取締役社長/CEO
照屋朋子
NGOユイマール 代表
原聖吾
マッキンゼー・アンド・カンパニー
ハリス鈴木絵美
チェンジ・ドット・オーグ 日本代表
藤沢久美
シンクタンク・ソフィアバンク 代表
船橋力
株式会社ウィル・シード ファウンダー 取締役会長
堀田真代
ソフトバンク株式会社
松古樹美
野村ホールディングス コーポレート・シティズンシップ 推進室長 マネージングディレクター
矢部寛明
一般社団法人アショカ・ジャパン ユースベンチャープログラムリーダー

専門家

学生が東北の復興を考える上で、各分野の第一人者から必要なインプットを頂きました。

プログラム概要

被災体験の共有

東日本大震災震災からもうすぐ3年。このサミットに東北の学生が集まった意味は何なのか。震災について語る必要はあるのか。「被災者」「非被災者」関係なく復興について考える意味は何なのか。参加学生一人一人がそれぞれの「2011年3月11日」に思いを馳せ、自分の体験と向き合いました。仲間の体験に耳を傾け、受け止め、共感した、特別な空間がそこにはありました。

ビヨンドトゥモローナイトでのパネルディスカッション

本音で話してくれと言われても、最初は何を話したら良いのか分からないと思う。みんな何をどこまで言っていいのか分からない。そんな状況で、沈黙もあると思う。でもそれは「意味のある混沌」。これは、答えを出すためではなく、思いを共有するためのディスカッション。頭の中に思い浮かんだフレーズから話してほしい。思ったことを話すのは怖いけど、そこから始めるのが大切だと思う。

千葉真英
慶応義塾大学総合政策学部1年(岩手県立大船渡高等学校卒業)

自分は内陸で地震に遭ったが、被災地のために何かをしたいと思い2年前のサミットに参加した。そこで出会った友人は両親を亡くしていた。それまでは、マスメディアを通して「知っていた」はずの震災が自分に迫ってくるのを感じた。参加した後、自分は被災していないが、自分の近くに「被災者」がいることで、100%その人の気持ちはわからないが、学ぶことが大きかった。それがあったからこそ、いま被災地のために何ができるか考えている。そういうことが、このサミットではできる。何を話したら良いか分からないかもしれないけど、それを乗り越えると得られるものがある。 上澤知洋
東北大学農学部2年(岩手県立盛岡第一高等学校卒業)

私は震災後に故郷の気仙沼を離れ、大好きな水泳を続けるために単身で神奈川の高校に転校した。そこで、宮城と神奈川のギャップに戸惑った。神奈川にいると、本当は震災なんかなかったんじゃないかと思うような平和な空気が流れていた。夜になると家を失くしたことを思い出し、地元気仙沼に戻り、地元のために何かしたいと思った。2ヶ月しか被災地にいなかった、こんな自分がサミットに参加して良いのか分からなかった。でも自分が参加することで、他の似た境遇の人に良い影響を与えられると思った。避難先では話せないような話をすることができた忘れられない2泊3日になった。

藤田真平
神奈川大学法学部2年(神奈川県立岸根高等学校卒業)

参加学生代表スピーチ

伝えるのが辛くても、震災の被害を受けた自分たちだからこそ、被害に遭わなかった人や未来の人のために震災のすべてを伝えていく使命がある。そのことを強く決意した。ビヨンドトゥモローという存在は、私にとって革命だった。お母さんありがとう。私はいま一生懸命生きています。

佐久間楓
東北芸術工科大学芸術学部1年生
(石巻市立女子高等学校卒業)

課題発表

2日目の朝、各チームが2日間取り組む課題が発表されました。

「地域社会参加型の復興」

東北の復興とは、行政に関わる一部の大人だけで作るものではなく、そこに住む子どもから大人までが、自分がどのような街に住みたいかを考え話し合い、復興に向けた活動に積極的に関わっていくことが大切です。今回のサミットでは、そのような「地域社会参加型の復興」がどのようにしたら実現できるのかを話し合い、提言にまとめます。提言発表会で、ゲストによる投票を行い、1位の班は安倍昭恵首相夫人によって首相公邸に招かれ、提言を届けます。

安倍昭恵首相夫人からのレター

東北未来リーダーズサミット2013開催にあたり、安倍昭恵首相夫人より参加者宛に激励の手紙を頂戴致しました。

東北の未来を担うのは皆さんです。この3日間、ぜひ精一杯考え、話し合い、明るい未来につながる提言作成にとりくんでください。

ビヨンドトゥモロー東北未来リーダーズサミット2013へのメッセージ

 本日のビヨンドトゥモロー東北未来リーダーズサミット2013に、東北被災地を代表する高校生・大学生である皆さんが集結したことを喜ばしく思っております。今年の3月に、スプリングプログラムで初めてお話を伺いましたが、それぞれ大変な経験をしながらも、自分たちで未来を作っていこうという熱い志に心から感銘を受けました。

震災から2年以上経ちましたが、東北の復興にはより長い目でみた取り組みが求められています。東北の未来を担うのは、若い世代の皆さんであり、皆さんにこそ、復興の当事者として、リーダーシップを発揮していっていただきたいと考えています。

復興には、高台移転、防潮堤計画、復興道路の建設など、様々な課題が山積していますが、そういった様々なテーマについて、皆さんが提言をまとめるというのは大変素晴らしいことです。私も皆さんの意見を聴けることを楽しみにしています。

14日の提言発表会に伺えないのはとても残念ですが、優勝チームと、事例研究を行う大学生のチームからは後日、その提案を伺うべく、公邸にご招待したいと考えています。

東北の未来を担うのは皆さんです。この3日間、ぜひ精一杯考え、話し合い、明るい未来につながる提言作成にとりくんでください。

東北未来リーダーズサミットの成功を心より祈っております。

安倍昭恵

テーマ

  1. 魅力ある街づくり
  2. 東北からの発信
  3. 世代を越えた恊働の場

現地のニーズの理解

参加学生は、提言策定に向け、現地のニーズを把握することから始めました。震災から2年半が経った今、東北で何が求められているのか、本当に必要な政策とは何か。参加学生は、自らの体験と、現地の声を元に議論しました。

共有された現地の声

被災遺物の保存がないことが課題だと感じる。東北には、広島の原爆ドームのようなものが残っていない。被災遺物がなく、50年後、100年後の未来に何が残せるのだろうか。私たちは震災と向き合い、未来に伝えていく義務がある。それを達成するためには、象徴となる遺物が必要だと思う。

サミットに向けて、東北に住む人にインタビューをしたが、そこで分かったのは「被災者」であっても同じ思いを持っているとは限らないこと。住民のニーズを反映させるべきだという人もいれば、反映させるべきではないという人もいる。こう考えると単に住民の声を全て取り入れることが最善ではないように感じる。幅広い考えを持った「被災者」の声を反映させるのは実に難しい。政治家が決めるのではなく、住民自身に決める余地を残すことも考えても良いのかもしれない。

専門家インタビュー

魅力的な街づくり
木山啓子
特定非営利活動法人ジェン(JEN)理事・事務局長

コミュニティの人が自分で自分の生きる道を選ぶことができることが一番大切。その人たちを巻き込むためには、徹底的に話し合うこと。支援する人はあくまでも「促進者」。放っておいても人間は潜在的に自立する力を持っている。そのプロセスを少しでも短くできるようにすることが支援する側の役割。

東北からの発信
糸井重里
コピーライター/ほぼ日刊イトイ新聞主宰

皆、「伝えること」に一生懸命になりすぎている。伝える「前」にあるものが大切。あなたが震災について、どんな考えを持っているのか、どういうことを真剣に取り組んでいるのかということが、人は興味があると思う。あなたが「伝えること」以外で何をしているかということが問われる。そこにもっと重心を置くことが大切。

世代を越えた恊働の場
渋澤健
コモンズ投信株式会社 会長
公益財団法人日本国際交流センター 理事長

大人には「政府が」「企業が」何かやってくれると思っている人たちが多く、「自分たちで」ということを考えている人が少ないのかもしれない。高校生たちが、社会課題の解決に向けて率先して行動している姿は、大人たちに気付きや勇気を与えてくれる。今の世代より未来の世代が良くあってほしいというメッセージは、立場に関係なく共感されるメッセージ。だから、次の世代の皆さんが自発的に動いているということは、共感を呼ぶ。これが皆さんの一番の武器になるかもしれない。

「地域社会参加型の復興」の事例研究
石渡正佳
千葉県県土整備部河川環境課河川海岸管理室長

日本では、アメリカのように住民がどのように参加にするかが法律で決まっていないため、住民の声を反映させることは難しい。防潮堤建設など、人命にかかわることで、住民の合意形成まで5年、10年と待つことはできないため、行政によるトップダウンで建設計画が進められてしまう。住民の合意形成を待つということは、日本の制度上難しいのが現状。ただ世界にはうまく住民参加を取り入れている事例もあるため、将来的に日本の制度を変えていくことで住民参加を取り入れることは可能。

最終提言発表

「被災者」も「非被災者」も一緒に東北について考え行動していかなくては、本当の復興にはたどり着けないんだ―そんな思いを胸に、始まった2泊3日のプログラム。それぞれに違う3月11日を経験し、それぞれに違う2年半を歩んできた参加者学生たち。分かり合いたいけれど、分かり合えない。それでもお互いを理解したい。

決して楽しいことばかりではなかった。時にぶつかり、もどかしく、悔しい思いもした。それでも、一つの目標に向かって力を合わせて提言を作成し、提言発表会で提言を発表する姿は、友人や先輩・後輩という枠を越え、東北を本当に良くしたいという思いで結束した「同志」そのものでした。そしてそれぞれの提言は、3日間だけでなく、2年半と言う年月の集大成のようでもありました。未来のリーダーとして提言を発表する参加学生、そしてその思いを真剣に聞く各界のリーダーたち。会場は熱気と未来への希望に包まれました。


 スペシャル・メッセージ

櫻井本篤
ジャパン・ソサエティー 理事長

このサミットは東北の人たち自身が自分たちを助けるための第一歩ですが、復興には日本全体の協力も必要です。そしてその協力の先に国際的な視点を入れ、国際的な環境でどのように協力を仰いでいくかという視野の広いアプローチをしていただけると嬉しく思います。その過程で、皆さんの人格も育まれ、さらに今後の東北の復興に向けて良い知恵も出てくることでしょう。


 講評

竹中平蔵
慶應義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長

本日は、東北未来リーダーズサミットなので、皆さんはリーダーです。リーダーとして、今後さらに辛い思いを敢えてして頂きたいと思っています。リーダーは辛いんです。でも皆さんが辛い思いをして、それを乗り越えてきたからこそ、新しいリーダーになれる。「逆境は新しいリーダーを創る」というのが、ビヨンドトゥモローの一つのテーマにもなっていますが、そのことにも思いを馳せて頂きたいと思います。

リーダーというのは常にリスクに直面します。何かやろうと思うと、必ず反対論が出ます。その反対論を押さえながら、自らのリスク管理をしながら、しかし全体を引っ張っていかなくてはいけない。「改革者は皆不幸である」というゴルバチョフの言葉があります。今までやったことないことをやろうとすると、最初は「そんなことできっこないから止めろ」と色々な批判をされる。しかしそこに道ができてしまえば、その道を開いた人の苦労を誰も顧みず、当たり前のように皆がそこを通って行く。それがリーダーであり、改革者です。私は皆さんに、誇りを持って、胸を張って、そんなリーダーになって頂きたいと思います。


 学生スピーチ

私は、これまで母の死について、ずっと後悔して生きてきました。しかし、今ここに「ないもの」を追いかけるのではなく、今確かに「あるもの」に感謝し、これから「生まれてくるもの」を信じて生きていきたいと思えるようになりました。

佐藤迅
宮城県農業高等学校

2年前の自分からは想像もできない変化です。チャンスを与えられることで、私は社会への関わり方が大きく変わりました。

遠藤見倫
石巻専修大学経営学部2年
(宮城県石巻北高等学校卒業)

千葉真英
慶応義塾大学総合政策学部1年
(岩手県大船渡高等学校卒業)

首相公邸での提言提出

優勝チーム(チーム5)と大学生事例研究チームは首相公邸に招待され、安倍昭恵首相夫人に提言を届けました。

これから生きていくのは、皆さんのような若い世代です。皆さんの提言が実現されるべく、応援していきたいと思います。大きな大きな夢を掲げて、日本中の人々の夢の象徴になっていってください。 安倍昭恵首相夫人

メディア掲載

  • 「被災の高校生、未来を語る 来月12日からサミット」(福島民報 9月1日)
  • 「高校生が復興議論 サミット参加募る」(岩手日報 9月1日)
  • 「復興は自らの役割」(電気新聞 9月11日)
  • 「参加高校生を募集 リーダーズサミット」(東海新報 9月12日)
  • 「若者が考える東北の未来 東京でサミット」(岩手日報 10月14日)
  • 「『東北の未来を創るのは自分たち!』被災地の高校生が復興策を提言」(リクナビ進学ジャーナル)

支援団体


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