TOMODACHIサマー2012ビヨンドトゥモロー 米国プログラム~復興とまちづくり~事前研修 開催報告
1. 概要
2012年8月に2週間に渡り米国にて開催される「TOMODACHIサマー2012 ビヨンドトゥモロー 米国プログラム ~復興とまちづくり~」(以下、米国プログラム)の事前研修を、2泊3日の合宿形式で富士山麓にて開催致しました。米国プログラムにおいて参加学生は、東北復興に活かしたい米国における復興の経験を学びます。
2. 目的
学生が米国プログラムに参加する前に米国同時多発テロ、ハリケーン・カトリーナ、その他の自然災害による被害、そして復興における課題を整理し、災害復興やまちづくりに関する参加学生の理解を深める。- 東北における復興やまちづくりの課題を整理し、自分たちが米国で学びたい事例や、東北代表として発信したい東北からのメッセージについて議論し、思考を深める。
- 一つ屋根の下で寝食を共にすることで、2週間の米国プログラムを遂行するために必要不可欠なチームとしての一体感を構築する。
3. 開催日時
2012年6月29日(金)~7月1日(日)の2泊3日
4. 開催場所
やすらぎの別邸 四季亭(山梨県富士吉田市)
5. 参加者
2012年米国プログラムに参加する大学生9名と、ビヨンドトゥモロー高校留学プログラムで長期留学を予定している高校生3名が参加しました。 クリックするとプロフィールが表示されます。
藤田美子 石巻専修大学経営学部1年(宮城県石巻北高等学校卒業) 震災で父と家を亡くし、絶望の淵におかれる思いをしながらも、震災のことを多くの人に知ってもらいたいと、写真部の部長として活動した経験を活かして、被災地における津波の爪痕を写真に残し、メディアを通して発信したという経験を持つ。震災を経験した者として、被災地の「今」を発信していきたいという意欲を持ち、未来においては「今」を「過去」にすることなく、生きている瞬間を心に刻み続けられるような活動をしていきたいと考えている。米国プログラムを通して、震災からの復興やまちづくりを日本国外から見ることで、東北独自の復興ビジョンを考えるきっかけにしたい。
牧原涼子 東陵高等学校3年 9月より英国Saint Michael’s Collegeに留学予定 津波で、南三陸の自宅を失う。震災で、それまでの日常、故郷、そして友人を失ったことで、悔いのない人生を送りたいと思うようになる。それらの経験を通して、かねてから一歩が踏み出せずにいた留学を決意。英語力やコミュニケーション能力を上げ、被災した自分だからこそ発信できる震災の経験を世界に伝えたいと考えている。
小野田栄子 早稲田大学商学部1年(仙台育英学園高等学校卒業) 震災により、気仙沼の家を失う。悲惨な震災が自らの人生の良い転機だったと思えるよう、震災を経験した自分たちだからこそできることを模索し、「社会貢献」の精神を持って世の中を良くするために積極的にアクションを起こしていきたいと考えている。将来は、国際機関における開発途上国の支援や国づくり、国際ビジネスなどに携わる、海外で活躍できる人材になることが夢。米国において、人々がどのように災害やテロから立ち直り、地域を以前より魅力的な場所にしようと試みてきたのかを学ぶため、本プログラムへの参加を決意。
白澤智也 東北大学農学部1年(岩手県立盛岡第一高等学校卒業) 「農業」をキーワードに日本国内のみならず、世界における貧困問題を解決できるような支援のあり方を模索していきたいと、農学部へ進学を決意。大震災での経験を自身の心の中に留めておくのではなく積極的に発信していきながら、仲間と一緒に大きく成長していき、その結果として、被災地の方々へも希望をもたらせるような活動をしていきたいと考えている。そのために、大学での勉強はもちろん、ビヨンドトゥモローのプログラムに参加して自分の夢に向かって遭進していきたいと考えている。自身初の海外経験となる今回のプログラムでは、実際に現地の人々に話しを聞くことで、米国における「弱者への支援」の経験を学び、将来、東北復興や世界において役立てたいと考えている。
木田昌真 筑波大学社会・国際学群1年(岩手県立高田高等学校卒業) 陸前高田市で被災し、両親を亡くす。高校では生徒会長としてリーダーシップを発揮、震災後には、第14代高校生平和大使としてスイスの国連欧州本部を訪問した。震災で世界より多くの支援が寄せられたことから国際連帯の重要性を感じ、世界に防災の必要性を発信していくことが日本の今後の使命であると考えている。将来の夢は、陸前高田市の市長となり、被災地の復興を先導する立場になること。特に、多くの人が職場を失い、経済的困難にあえぐ状況に強い危機感を覚え、雇用問題の解決に貢献したいと考えている。米国でのプログラムを通して、復興やまちづくりをよりグローバルな視点から考えるきっかけにしたい。
熊田安奈 宮城大学事業構想学部1年(宮城県泉館山高等学校卒業) 震災時、宮城県の実家周辺に住む地域の人々が互いに声掛けをし、助け合う姿に心を打たれる。その時助けてくれた地域の人々に恩返しをしたいという気持ちから、2012年4月からは、現大学に在籍しながら、East Japan Challenging & Chanceという学生団体に所属し、ビジネスから東北を元気にしたいと考えている。米国では、ボランティア活動を通して自分が東北でできることについて考え、また、復興やまちづくりの成功と失敗の両方を学ぶことで、それらをベースとして東日本の復興に適した方法を模索したい。
太田綾乃 宮城誠真短期大学保育科1年(宮城県石巻商業高等学校卒業) 石巻で被災。地震発生後、海から50メートルにある自宅から高台に避難し、一命を取り留めるが、津波で自宅や多くの友人を失う。震災後、米国ハワイやカナダで計2か月間のホームステイを経験。そこで、世界にいる人々が、如何に日本や日本人に思いを馳せ、復興を願っているかを実感。これらの経験から、将来はアフリカなどの貧困にあえぐ発展途上国で、保育に携わりながら子どもたちや保護者に震災の経験を伝えていきたいと考えている。米国では、町だけでなく、人々の復興を米国がどのように経験してきたかを学びたいと考えている。
菅田昌平 宇都宮大学国際学部1年(福島工業高等学校卒業) 震災で世界の国々から支援が寄せられたことから、国際協力の重要性を感じ、自らが国際社会に貢献できる存在になりたいと考えるようになった。日本だけでなく世界各地で貧困や紛争で苦しんでいる人々が明日への安心を持てるような社会構築を学ぶために、国際関係学を学ぶことを決意。大学在籍中には、ヨーロッパに留学し、視野を広げたいと考えている。また、被災者として、自然災害の恐怖や東北の力強さについて世界にむけて発信していきたい。米国プログラムを、多様な価値観を理解し、新たなアプローチで東北や世界に貢献できる人材になるための一歩としたいと考えている。
山内奈々美 宮城県宮城第一高等学校2年、9月よりフランスの高校に1年間留学予定 震災後、絶望で明日を生きる気力すらなくなった日々もあったが、震災はそれまでに気づかなかった大切なことも教えてくれたと感じている。震災後、被災地代表としてベラルーシ共和国ミンスク市で市長や現地高校生に震災について伝えるという活動も行った。日本とフランスの高校生をつなぎ、震災のことを積極的に発信し、「ビヨンドトゥモロー 海外支部」として活動したい、と意欲をみせている。
千田信二 宇都宮大学工学部1年(岩手県立大船渡高等学校卒業) 大船渡にて被災。津波によって母親と祖母を亡くし、家も流された。現在は父親と二人の弟と一緒に大船渡の賃貸住宅で生活している。多くの命が犠牲になった中で自分は助かったという経験から、将来は地元の復興と、自然災害に備えた街づくりに貢献することが生き残った者の使命であると考えている。三陸沿岸地域の災害に強い街づくりに参加し、復興に関する事業を行う会社を立ち上げたいと考えている。2012年3月にボストンを訪れて以来2回目となる今回の米国訪問では、マイナスから復興をスタートさせた米国の街が、これまでどのように再生してきたかを検証し、東北の復興に役立てたい。
佐々木美奈 福島県立郡山高等学校2年、9月よりスイスの高校に1年間留学予定 福島県郡山市で震災を体験。その後も放射能問題による福島に対する風評被害や差別を実際に体験し、全国の人々に対して福島の状況を発信していきたいと考えている。今後、東北が復興するためには、多くの人が東北を理解し、支えてくれることが重要であると考え、9月からスイスに留学予定。留学先では、高校生外交官として、福島の現状を積極的に伝えたい。将来は国連職員になり、世界の開発問題の解決に貢献することが夢。
井田友香 東北公益文科大学公益学部1年(福島県立相馬東高等学校卒業) 背後にせまりくる津波から逃れるために走っている最中に、通りがかりの人に車に乗せてもらうことができたために危機一髪で命拾いをしたという経験をもつ。震災で家を失い、父は失職。音楽大学に進学するという夢をあきらめ、就職を考えたが、将来は街づくり、地域活性化について学び東北復興を担う人材になるという新しい目標の実現のためにスカラーシップを得て進学を決意。東北の被災地が早く復興するように、全力で頑張り、被災地が安全で良い街になるよう仲間たちと力を合わせていきたいと考えている。人種構成がより多様な米国において、どのように多文化が共生できるまちづくりが行われているかを学び、将来東北のまちづくりに役立てたいと思い、本プログラム参加に応募。6. 講師・ゲスト
ワークショップの講師やゲストとして、復興とまちづくりの専門家や、留学・アメリカの専門家を迎え、米国プログラムや9月以降の高校留学生活において必要な知識や心構えを、学生にアドバイスしました。
西川智氏 国土交通省 土地市場課長
宮沢正知氏 国土交通省 官民連携政策課
横山英治氏 株式会社海外教育コンサルタンツ
藤田太一氏 四季亭 オーナー 農業生産法人ふじさん牧場 副牧場長7. プログラム内容
- 6月29日(金)
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- オリエンテーション①「プログラムの概要」
- オリエンテーション②「アイスブレイキング」
- ワークショップ①「災害復興における日米協力」
- ワークショップ②「3.11震災と自分とビヨンドトゥモロー」
- 6月30日(土)
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- ネイチャーウォーク
- ワークショップ③「ハリケーン・カトリーナ/米国同時多発テロとは何だったのか」
- ワークショップ④「復興と理想のまちづくり 第一部」(講師:宮沢正知氏)
- ワークショップ⑤「世界の災害対応」(講師:西川智氏)
- ワークショップ⑥「復興と理想のまちづくり 第二部」(米国で学びたい復興事例についてプレゼンテーションを作成)
- バーベキュー
- ビヨンド式ゲーム大会
- 7月1日(日)
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- 宿泊先オーナーを囲んでの朝食
- グループワーク①「東北から米国で伝えたい3つのこと」(チーム毎に英語でプレゼンテーション作成)
- 乳搾り体験
8. ワークショップ抜粋
①「復興とまちづくり」、②「米国で伝えたい東北の状況」、③「震災と向き合う」の3テーマについてプログラムを提供しました。
①復興とまちづくり
ワークショップ① 災害復興における日米協力
~自分たちが東北の代表としてアメリカに行くのか、東北復興における日米関係の重要性、トモダチイニシアティブとは~
ワークショップ③ ハリケーン・カトリーナ/米国同時多発テロ
米国同時多発テロ、ハリケーン・カトリーナとは何だったのか。事件後に求められた施策や取り組みについて理解を深める。
「アメリカでは、肌の色や見た目を問わず、みんなアメリカ人」 「貧困、暴力、インフラ、人種問題、原油価格、人口流出など、複合的な課題に対処するのが『復興』と『まちづくり』」 「アメリカだからこそ可能だった対応策は何だったのだろうか」
ワークショップ④・⑥復興とまちづくり
自らの体験を踏まえての中長期的な東北復興における課題の整理、および、自分たちが考える『理想的なまちづくり』とは何かをグループで議論。

■ 課題だと思うこと 津波で被害を受けた土地の再生、インフラ整備、雇用、地元企業の活発化、官民連携、コミュニティ内のつながりなど ■ 目指したいまちづくり 「安心・安全・安定のまちづくり」:地震や津波に強く、誰もが安心・安全を感じられるまちづくりを目指したい。そして、安心・安全を感じるだけではまちは発展していかないと思うので、社会や経済が安定して持続的に発展するまちづくりを目指したい。
■ 課題だと思うこと 震災後の人口減少、若者人口の地域外・県外流出、観光客の減少、など ■ 目指したいまちづくり 「帰ってきたくなるまちづくり」:雇用、医療、教育などの社会基盤がしっかりとしていて、東北出身の人々(特に若者)が故郷に帰りたくなるようなまちづくりをしたい。また、震災後、原発事故などにより減ってしまった観光客を呼び戻すために、東北をより魅力的なまちにしたい。ワークショップ⑤ 世界の災害対応
国土交通省 土地市場課長 西川智氏を講師に招き、世界の災害対応・復興の事例についての講義。 (事前リーディング:「カトリーナ災害におけるJFO(Joint Field Office)の対応」、「大災害後の復興計画策定過程-神戸市とニューオーリンズの計画策定過程の比較を中心として」、「ハリケーン・カトリーナへの対応の教訓と災害対応のための資源動員」、「高台移転 候補地を寄付(朝日新聞:平成24年1月11日朝刊))
② 米国で伝えたい東北の状況
グループワーク② 東北から米国で伝えたい3つのこと
東北から米国の人々に伝えたいメッセージをグループごとに議論し、英語でプレゼンテーション。
「We are the team of BEYOND Tomorrow. We would like to tell our stories of the 3.11 earthquake and tsunami」 「We will show our gratitude to American people for their support after the disaster」
「We would like to tell American people about the current situation in Tohoku after one year since the disaster」 「We would like to show that Tohoku, our hometown, is one of the most beautiful places in Japan」
③ 震災と向き合う
ワークショップ② 3.11震災と自分とビヨンドトゥモロー
東日本大震災を経て、なぜビヨンドトゥモローに参加することになったのか。ビヨンドトゥモローの仲間と出会い、最も特別だと思った瞬間は。東日本大震災から1年以上が経過した今、参加者は改めて自分の震災の経験と向き合いました。
“ビヨンドトゥモローとの出会いながなければ、震災のことを過去のものとして忘れることに注力し、震災の体験と向き合い、そこから先を考えることはできなかったと思う” “ビヨンドトゥモローの仲間と出会った瞬間、「ここでは何を言ってもいいのだ」と直感した。人生で友人と呼ぶことのできる人たちに出会えた瞬間だった”
“震災の傷があまりに大きく、受験もあったので、震災のことについてみたり考えたりしないようにしていた。でもそれでは心の整理がつかなかった時にビヨンドトゥモローと出会うことができた” “震災で家を失い、親は失職し、将来の夢を諦めなければならなくなった時に仲間に出会い、新しい道で自分の役割をみつけることができた。今は新たな夢に向かって歩くことができている”
支援団体
米日カウンシル
ボストン東北緊急支援ファンド
KPMGジャパン協力団体
米国プログラム事前研修は、多くの方々のご協力の下運営されました。関係者の皆様のご支援・ご協力に厚く御礼申し上げます。 (運営協力) ・株式会社ポイント: 運営スタッフとしてボランティアで3名の社員の方々がご参加下さいました。 (会場協力) ・やすらぎの別邸 四季亭: 富士山麓にある一軒家をセッション会場および宿泊会場としてご提供いただきました。
下記の地元農家の方々から、採れたてのお野菜や果物、卵をいただきました。
【今回の事前研修での学びを踏まえ、2012年8月6日~22日の米国研修に旅立ちます。】

「We are the team of BEYOND Tomorrow. We would like to tell our stories of the 3.11 earthquake and tsunami」 「We will show our gratitude to American people for their support after the disaster」
「We would like to tell American people about the current situation in Tohoku after one year since the disaster」 「We would like to show that Tohoku, our hometown, is one of the most beautiful places in Japan」
“ビヨンドトゥモローとの出会いながなければ、震災のことを過去のものとして忘れることに注力し、震災の体験と向き合い、そこから先を考えることはできなかったと思う” “ビヨンドトゥモローの仲間と出会った瞬間、「ここでは何を言ってもいいのだ」と直感した。人生で友人と呼ぶことのできる人たちに出会えた瞬間だった”
“震災の傷があまりに大きく、受験もあったので、震災のことについてみたり考えたりしないようにしていた。でもそれでは心の整理がつかなかった時にビヨンドトゥモローと出会うことができた” “震災で家を失い、親は失職し、将来の夢を諦めなければならなくなった時に仲間に出会い、新しい道で自分の役割をみつけることができた。今は新たな夢に向かって歩くことができている”
