なりたい自分を言葉にする4日間 ― サマー・リトリート2025開催報告
2025年8月20日~23日、埼玉県および東京都にて、「サマー・リトリート2025」プログラムを開催しました。
プログラムの背景
児童養護施設で暮らす若者の進学率は依然として低く、高校卒業後に4年制大学へ進む割合は約2割にとどまります。半数以上の若者は生活のために就職を余儀なくされており、その背景には経済的な事情だけでなく、進学を通じて夢を実現した先輩の事例が少なく、身近にロールモデルがいないという課題があります。また、ひとり親家庭や生活保護世帯など、経済的に困難を抱える家庭の子どもたちも、自ら進路を自由に選び取ることが難しい現状があります。
こうした状況を踏まえ、本プログラムでは児童養護施設や経済的困難を抱える家庭に暮らす高校生や大学生が参加し、宿泊型研修を通じて、様々なフィールドで活躍する大人や、社会で活躍する先輩たちと出会いました。多様な人との交流を通して自分の将来を主体的に考え、進路やキャリアの可能性を広げることを目指し、本リトリートを実施しました。
〈参加学生〉
・エンデバー(高校生)奨学生(9名)
・ジャパン未来スカラーシップ・プログラム(大学生等)奨学生(6名)
・インターンシップ参加学生(3名)
〈支援〉 感動体験支援基金
〈協賛〉 キンコーズ・ジャパン株式会社、グリーンコア株式会社
〈協力企業〉 バンク・オブ・アメリカ(会場提供)
プログラムテーマ:『なりたい自分』を探す・深める
サマー・リトリート 2025 は、感動体験支援基金の支援を受け、開催が実現しました
~感動体験支援基金とは~(基金 HP より)
2022 年 3 月に平井一夫氏により創設されました。この基金は経済的に困難、またはさまざまな課題に直面する子どもたちに”感動体験”を支援提供することによって、将来的に子どもたちがさまざまな生き方・働き方を知り、自らの人生を自分自身で切り開く力を体得し、将来的な貧困状態の解消と世代連鎖を断ち切ることを支援するものです。また、令和 7 年度は令和 6 年能登半島地震で被災した子どもの体験活動の支援を行う NPO への支援も行っています。
~創設者 平井一夫氏より~
Project KIBO は、子どもたちにさまざまな「感動体験」を届けることをミッションとして活動しており、本プログラムに共感し、一部協力させていただきました。3 泊4 日のプログラムを通じて、初めて訪れる場所や仲間との交流が一人ひとりの感動体験となり、世界観を広げるきっかけとなることを願っています。平井一夫(一般社団法人プロジェクト希望 代表理事)
プログラムハイライト
【オリエンテーション 8月20日】
ビヨンドトゥモローに参加する奨学生は、全国から選抜された高校生、大学生から成ります。サマー・リトリート初日は、全国から学生が東京に集まりました。
集合後は、埼玉県・飯能市に移動し、野外カレー作りなどの飯盒炊爨や、オリエンテーションを行いました。また、これからのプログラムに向けての関係構築や、4日間を共に過ごす仲間について深く知り合うためのプログラム「ビヨンドナイト」を実施しました。
【企業訪問・キャリアワークショップ 8月21日~22日】
プログラム2日目と3日目は、様々なフィールドにおけるリーディングカンパニーを訪問。各企業の事業についてや、そこで働く人たちの仕事やキャリア感についてお話を伺いました。参加学生たちは、各所の訪問を通し、自分は将来どんな大人になりたいかを考え、そのためにどのような進路やアクションを選択したいかについて話し合いました。また、ビヨンドトゥモローの卒業生との対話の機会では、卒業生のキャリアについての話を聞いたり、質問することで、自分の将来のビジョンについてより現実的・具体的に考える機会を持ちました。一連の活動を通し、自分の未来についての「アクション・プラン」を作成し、最終日に開催した発表会では、高校生は個別で、大学生はチームごとにプレゼンテーションを行いました。
企業訪問:株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ
株式会社ソニー・ミュージックレーベルズでは、長きにわたり制作ディレクターとして音楽業界に携わってきた、沖田英宣氏よりお話を伺いました。
アーティストと向き合う音楽業界での仕事において、届ける相手を想像することや、悩み迷うことの大切さなど、どんな仕事にも応用できる考え方をお話いただきました。学生たちは心に残ったことを共有しあい、社員と交流しながらさらに考えを深めました。
企業訪問:キンコーズ・ジャパン株式会社
研修が始まる以前より、学生たちが意見を数回にわたり出し合い、自身が参加するエンデバー・プログラムを広く紹介するためのポスター作りをキンコーズ・ジャパンの皆様にご協力いただきながら、進めてきました。
クライアントの要望を形にする仕事の専門性などを実体験を通して学ぶことができ、当日出来上がったポスターを見て、学生たちは感動した様子でした。
学生たちが制作したポスターは、翌年の奨学生募集のポスターとして実際に使用されます。
また、当日はキンコーズ・ジャパン様のご厚意により、エンデバー・プログラムをイメージしたキーホルダーも奨学生全員にプレゼントしていただきました。
企業訪問:LINEヤフー株式会社
日本を代表するインターネット企業であり、検索・ニュース・ECからコミュニケーションや決済まで、生活に密着した幅広いサービスを展開しているLINEヤフーを訪れ、オフィスツアーや企業について学びました。
時代に合わせて変わる事業や働き方、働きやすい職場環境への配慮などご紹介いただいたほか、学生からはキャリア選択やアプリの活用に関する質問など、様々な質問が出ました。
最終日プレゼンテーション
プログラムテーマ「なりたい自分を探す・深める」のもと、最終日には、これまでの学びをまとめ、プレゼンテーションを行いました。高校生は、「なりたい自分を実現させるためのファーストアクション」について個別に発表しました。大学生は「なりたい自分の未来アクション」 ~社会のためにわたしたちができること~ のテーマのもと、自己と社会を紐づけながら、各班で社会課題を設定し、課題解決のためになにができるのかを提言としてまとめました。発表後には、ゲストによる講評のほか、特別ゲスト一般社団法人「コンパスナビ」代表理事 ブローハン聡氏による講和がありました。

なりたい自分を実現するためのアクションをプレゼンテーション
参加学生の声
エンデバー参加高校生 彩香さん(仮名)
“私は今まで進路や就職について明確な目標がありませんでした。それについて焦りもあ ったのですが、今回はどちらかと言ったら進路などより人間としてどんな人になりたいか をメインで考えようと思って参加しました。
色々な人のお話を聞いて、何かやりたいものが見つかった時に諦めなくていいようにできるだけ選択肢を持てる環境にいることや、今できる目の前 にあることを全力でやろうというモチベーションになりました。また、ビヨンドトゥモローに参加し なかったら絶対に出会えなかったような全国の同世代や社会で活躍する素晴らしい人たちと出会えて、自分の理想像が明確化したり内面の成長を感じ、勇気を出して応募して本当に良かったと改めて思いました。
このように自らチャンスを積極的に掴 みに行く姿勢が、逆境の中で他の人より選択肢が少ないところにいたとしても大切なんだなと思い、これからも自分でチャンスを掴みに行ける環境にいれるように目の前のことに全力で取り組み、やりたいことが見つかったらそれを全力で叶えに行こうと思います。”
エンデバー参加高校生 美咲さん(仮名)
“今回周りの人にアドバイスや声かけをして支えるということができるようになった。しかし、できないことやわからないことがあった時、わかるまで頼るということが苦手だということに気づくことができた。次回のプログラムなどでまたリーダーなどをする機会があれば素直にヘルプがだせるようになりたい。
また、今回初めて失敗するという経験をしていままで気づけなかったことに気づくことができた。この失敗を失敗で終わらせず次の成長へ繋げていこうと思う。また、今回のプログラムでは企業訪問や卒業生進路相談会、ゲストセッションなどでたくさんの人からお話を聞きインプットすることが多くありました。今回学んだことを聞いて終わりにするのではなく次のプログラムまでの間で実践できることは行動に移したり、次のプログラムのときにまた1歩でも2歩でも成長した自分で参加したい。”
この度も、多くの方々の応援やご協力により、サマー・リトリート2025を開催することができました。
困難を経験しながらも、自身の人生を切り開き、社会に貢献しようとする若者の成長を、これからも皆さまと見守っていければと思います。