「あのとき、大人にしてほしかったこと」 社会的養護のもとに暮らす学生が発信 -セミナー報告-
活動報告
5月17日(土)、栃木フォスタリングセンターが主催の「自立支援事業説明会」が宇都宮市で開催されました。 説明会の後半には「自立支援事業を経験した方からの経験談、座談会」が実施され、ビヨンドトゥモローのインターン生および奨学生が参加しました。
このセミナーは、栃木フォスタリングセンター、 朝日新聞厚生文化事業団、ビヨンドトゥモローが協力して実現したもので、児童養護施設や里親家庭で暮らす子どもや、里親の方々が共に学び、語り合う貴重な時間となりました。
今回、ビヨンドトゥモローのインターン生は、企画運営にも主体的に関わりました。また、インターン生および現役奨学生は登壇者として、「あのとき、大人にしてほしかったこと」というテーマで、自身のこれまでの体験をふまえた真摯なメッセージを届けました。
「居場所を感じたことがなかったんです」
田山さん(大学3年生・環境法専攻)
複数の施設や里親家庭で暮らしてきた田山さんは、常に“良い子”でいようと努めてきたと話します。「手のかからない子でなければ、そこにいさせてもらえないかもしれないと感じていた」と振り返りました。
「まわりの大人たちには、無償の愛情を持ってほしい」
「親はいつもオープンでいてほしい」
田山さんの語りに、大人たちは耳を傾けました。
「真実を知らされたのが17歳だったんです」
篠田さん(大学4年生・舞台芸術専攻)
乳児院や児童養護施設、里親家庭を転々として育った篠田さんは、自分の出自を長年知らされず、不安と空想の中で苦しんできたと言います。「知りたいと何度も相談所に聞いたのに、教えてもらえなかった」。4歳で里親家庭に移った当時の“試し行動”についても、「本当に受け入れてもらえるのか、不安でいっぱいだった」と打ち明けました。
「“今、辞めていいんだよ”と言ってくれる大人が、いなかった」
山口さん(大学1年生・IT専攻)
児童養護施設での生活とアルバイト、部活動を両立させながら、苦しくても「辞める」と言えなかった山口さん。「“将来のために”と言われ続けて、“今”の自分を見てくれる大人はいなかった」と語ります。この言葉には、寄り添う側の大人たちも深く考えさせられるものがありました。
「話せば分かる、じゃなくて、“聞いてくれてありがとう”がほしかった」
近藤さん(高校3年生)
2歳から児童養護施設で暮らしてき近藤さんは、中学時代、突然実親が「引き取る」と施設に現れた経験を語りました。「何も知らされないまま“連れて帰る”と言われ、職員の方も「話せばわかる」と…。その時は本当に怖かった」とふり返ります。最終的には近藤さんの意志で施設に残ることができましたが、心の準備も説明もなく状況が進んだことが何より恐ろしかったと話しました。
※掲載の氏名はすべて仮名です。
今回のセミナーにおいて、登壇した学生たちは、自らの経験や想いを自分の言葉で語り、その声が場の空気を変え、聞く人の心に届く瞬間がありました。また、インターン生が企画・運営に主体的に関わり、この場づくりを担ったことも、リーダーシップを育む大切な一歩となりました。発信し伝えること、その場を創ること――そのすべてが若者の成長につながる経験となりました。
話を聞いていただいた里親や支援者の方々にとっても、普段なかなか届かない若者たちの率直な声を受け止め、共に社会的養護のあり方を見つめ直す機会となりました。
ビヨンドトゥモローは、本セミナーのように、学生が自ら考え、声を発し、行動することが変化の原動力になると信じています。