公益財団法人教育支援グローバル基金|ビヨンドトゥモロー

困難に立ち向かう若者たちの新生活-挑戦と支援の大切さを考える

はじめに 

それぞれの人が新たな道へ踏み出す「スタートの季節」です。 

進学、進級、就職、引っ越しなど、人生の節目には、経済的な支えや知識、そして周囲のサポートが求められます。 

このような時期であっても、様々な理由で、親や周りの大人からの支援が得にくい若者たちがいます。 

親を頼れない、経済的に厳しい…そんな状況で、夢を叶えたいと願い、前に進もうとすることは、決して簡単ではないかもしれません。

それでも自分の力で道を切り拓いている若者は、どのような思いで、どのような道を進み始めているのか―
今回は、困難に立ち向かおうとする若者たちが、新しいスタートを切ることの意義と、それを支える支援について考えます。 

奨学生たちの声

この春新たなスタートを決意した、ビヨンドトゥモローの奨学生3名に話を聞きました。

 


Q.この春、どんな変化がありましたか?

児童養護施設を卒園(退所)して、一人暮らしを始めました
これまで職員さんにやっていただいていたことを、全部一人でやらなきゃいけないのは大変ですね。
大学も、最初は知り合いが全くいない環境で、頼れる人がいなくてどうしよう…という気持ちが常にありました。 

Q.一人暮らしを始めるまで、どんな気持ちだった?

楽しみ半分、不安半分、でした。施設の方からは、措置延長も勧められたんですが、自分の力で暮らしてみたい気持ちが大きくて。
進学したいともずっと思っていたので、高校時代から週4でアルバイトをして、進学費用を貯めていました。
いざ一人暮らしをするとなったら、部屋のレイアウトを考えたりするのは楽しかったけど、お金の不安は付きまとっていました。

措置延長…児童養護施設からの退所を満18歳から満20歳まで延長させること。

Q.大学進学を決意したときのことについて教えて。

大学に行きたいという気持ちはずっとあったのですが、親と暮らしていたとき、経済的に厳しいから高校進学も危ういかもと言われて。
3で施設に入って、奨学金などいろんな制度について教えてもらったことで、頑張って自分の力で大学進学を目指そうと決意しました。今も奨学金はかなりの数申し込んでいます。
学部は、自分がやりたいことと、これから需要が高まりそうな分野を考えて、IT系の学部に決めました。アルバイトと両立できるような受験方法と大学を探して、無事に合格することができました。

Q.大学生活はどうですか?

授業は大変になり始めています…。大学のバスケ部に入っていて、最初は友達作りに苦戦しましたが、今では仲のいい友達もできてすごく楽しいです!
あとは、大学入学を機に一旦アルバイトを辞めたので、そろそろ新しいアルバイトを探そうかな…と思っているところです。 

Q.将来の目標はありますか?

人から頼られる人になりたい、というのが目標です。
IT系の学部に通っているので、将来はシステムエンジニアとして、たくさんの人に頼られたいなと思っています。
あと、僕が生まれた県は、これまで暮らしていた場所とは違うんです。でも、そのころの記憶がないので、生まれた場所で過ごしてみたいなという気持ちがずっとあって。
なので、就職は生まれた場所の近くでしたいなと思っています。自分の暮らしたい場所で、自分の好きな仕事をしながら、ちょっと優雅に暮らすのが今の夢です()。

 


Q.この春からどんな変化がありましたか?

高校3年生になり、進路に向けて動き始めました
私の夢は、医療資格とトレーナーの資格を持ったスポーツトレーナーになることです。
そのために、どちらの資格も取得できる県外の大学に進学を希望していて、情報収集をしたり受験勉強をしたりしています。

Q.その夢を目指そうと思うようになったきっかけは?

父が闘病していたとき、自宅に訪問看護の看護師さんが来てくださっていたんですが、父が笑顔になる瞬間を鮮明に覚えていて。それで、人を笑顔にできる、元気にできる人になりたいなとずっと思っていました。
高校生になって、あるスポーツを始めたのですが、自分がケガをしたときに、トレーナーの方が身体も心も支えてくれて、自分もこんな風にスポーツ選手を支えたいなと思ったんです。
自分の中の思いを掛け合わせて何かできないかなと思って、「医療資格とトレーナーの資格を持ったスポーツトレーナー」という目標にたどり着きました。

Q.今、進学や将来について不安なことはありますか?

志望の大学が県外なので、一人暮らしになるんですが、学費をはじめ、いろんな費用がかかってくると思うので、金銭面の心配が大きいです。
母子家庭で兄弟も多いため、家族に負担をかけないよう自分で稼ぎながら学校に通おうと思っているのですが、資格の勉強との両立などが上手くできるかなという不安もあります。

 Q.不安を解消するために、誰かに相談などはしている?

ビヨンドトゥモローの先輩に相談しています。
学校には、なかなか奨学金に詳しい人がいなかったり、似た家庭環境の人がいなかったりするので。同じような環境で大学進学を経験した先輩に聞くことで、自分のビジョンをより明確にしています。

Q.ビヨンドトゥモローの活動と受験勉強の両立に不安はなかった?

受験との両立が不安な気持ちは、少しありました。
でも、昨年1年奨学生を経験して、忙しすぎて受験に集中できないといったことはないだろうと思いましたし、プログラムで将来について考える時間や奨学金に関する講座などがあったりするので、逆に助けになるなと思っています。

 


Q.この春、どんな変化がありましたか?

美術大学に進学しました!言葉の表現などを通した芸術を学ぶ学科に通っています。
これまで家から近い高校に通っていたので、電車通学が始まったのも自分の中では大きい変化です。
輸入食品店でのアルバイトも始めました。すごく丁寧に教えてくれるし、将来やりたいことの勉強にも繋がるので充実しています。

Q.進路を決めたときのことについて教えて。

高校2年生の終わりごろに、芸術系の方向へ進むことを決めました。
それまで全く別の進路を考えていたのですが、4年間熱意をもって学べるかなと思ったときに、引っかかって。
昔から好きだった「芸術」という道に進みたい気持ちがあることに気づきましたが、どうしようと一人で迷っていたときに、母に「本当はこっちをやりたいんでしょ」と言われて背中を押されました。
好きなことをやるより、安定している仕事に就いた方がいいんじゃないか…というのが一番の不安でした。たくさん悩みましたが、周りの大人に相談して、「将来のことは誰にもわからないから、とりあえずやってみよう!」という気持ちになり、自分の進む道を決意することができました。 

Q.将来やりたいこと、なりたい像は?

自分の軸がある人ってかっこいいなと思っていて。
今の私は、芸術で人の心を救う活動がしたいと思っていますが、音楽活動や身体表現、服飾、舞台など…やりたいことがたくさんありすぎるので、大学4年間を通してたくさんの人と出会って、いろんなものを見て、自分の軸を見つけていきたいと思っています。 

Q.1年前の自分に、何を伝えたいですか?

実は受験に何度か失敗してしまい、挫折を味わった経験でした。学校の先生や母に「次があるよ!」と励まされて、なんとか切り替えて一般受験に挑むことができたので、「切り替え」の難しさと大切さを痛感した1年でしたね。
第一志望の大学に無事に合格できたし、この経験は今後も活きると思うので、「頑張ったね」と伝えたいです!


 3人の若者たちのインタビューから見えてきたのは、それぞれが困難な状況の中でも前を向き、夢や目標に向かって努力している姿でした。

そして、それを支える小さな後押しが、彼らの一歩を大きく変える力になっています。  

ビヨンドトゥモローの活動 

この春から、ビヨンドトゥモローでは、2025年度奨学事業が始まりました。 

エンデバー(高校生)奨学生11名、スカラーシップ(大学生等)奨学生12名が、新たな一歩を踏み出しました。 

奨学生たちに共通しているのは、みな、困難を乗り越えて前に進もうとする意欲と、目の前の問題に立ち向かおうとする力を持っていることです。 

「生まれ育った環境に左右されずに、自由に歩みたい道を決め、進むことができる社会」――
若者自身が「挑戦したい」という志を持ち、その過程における難しさを軽減できるような仕組みがあれば、そんな社会を創り上げることができるのではないでしょうか。

そのためには、経済的な支援はもちろんのこと、ロールモデルとなる人物の発見や視野を広げる機会の獲得、進路について相談する場など、様々なサポートが必要となります。  

ビヨンドトゥモローは、奨学金の支給と人材育成プログラムの提供を通して、自由に未来を描くことのできるよう、彼らをサポートしています。

「ビヨンドトゥモローの活動は、普段することができないような経験ができ、『私たちだからこそできることがある』という学びや気づきを得ることができます。
お互いを支え合える仲間もできて、『自分は一人じゃない、自分らしくいていいんだ』と安心させてくれる場所です。」 -Bさん

「受験期、ビヨンドトゥモローの同期たちにたくさん相談したんです。
全国で様々な環境にありながら頑張っている仲間がいることは、ビヨンドトゥモローの良さだなと改めて感じました。
受験期という大変な時期でも、受験に限らず日々の生活も、ビヨンドトゥモローの仲間たちはお互いに支え合っていける関係だと思いました。」 -Cさん

若者それぞれの一歩が、より希望に満ちたものとなるよう、社会全体で支え合うことの大切さを今、共に考えていきませんか。

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