一般財団法人教育支援グローバル基金|ビヨンドトゥモロー

ビヨンドトゥモロー 3月オリエンテーション・プログラム2017 開催報告

動画

概要

ビヨンドトゥモローの奨学金事業「ジャパン未来スカラーシップ・プログラム2017」及び「エンデバー2017」に選ばれた約30名の奨学生が、これからの1年間をどのように過ごすかを考えるべく、3泊4日の「3月オリエンテーションプログラム2017」に臨みました。2017年度の奨学生が一堂に会し、これまでの自分の歩みをふりかえり、今後、他者のため、社会のために何ができるかを考え、自分の未来へのビジョンを描く機会を持ちました。また、プログラム期間中に東日本大震災の被災地を訪問し、6年前に東北を襲った未曽有の惨事について理解を深め、被災地の若者たちが震災後の日々、何を考え、どのように生きたかについて学び、社会における自分の今後の役割について考え、提言にまとめました。

主催
一般財団法人 教育支援グローバル基金
支援
子供の未来応援基金(平成28年度未来応援ネットワーク事業)
後援
岩手県陸前高田市

日程・開催地

日程:2017年3月19日(日)~22日(水)
開催場所:東京都・岩手県・宮城県

参加者

  • ジャパン未来スカラーシップ・プログラム2017在籍者21名(大学・短大・専門学校在籍者)
  • エンデバー2017在籍者8名(児童養護施設に暮らす高校生)

スケジュール

1日目 オリエンテーション・アイスブレーキング
対話セッション「これまでの道・これからの道」
TOKYO散策
2日目 リーディング・セッション「よだかの星(宮沢賢治著)」
提言作成
東京フォーラム/提言発表
東北被災地フィールドワーク・ガイダンス
3日目 東北へ移動
戸羽太陸前高田市長訪問
陸前高田市視察(仮設住宅、道の駅「高田松原」タピック45、旧気仙中学校)
気仙沼視察(漁港視察、藤田製函店でのブリーフィング)
入浴・夕食(南三陸ホテル観洋)
ディスカッション・提言作成
4日目 仙台へ移動
仙台フォーラム/提言発表
解散

プログラムハイライト

オリエンテーション「これまでの道・これからの道」

プログラムの冒頭、参加者たちは、自分の人生ストーリーを共有しました。嬉しかったこと、苦しかったこと、自分という人間を形成したこれまでの体験について仲間と共有し、そしてその上で、今後の自分の夢やビジョンについて語り合いました。テーマは、生い立ち、夢、自分の勉強分野など多岐に渡り、初対面同士が打ちとけるきっかけとなるだけでなく、自分とは何者なのかを自分自身が探るスタートとなりました。

リーディングセッション:「よだかの星」(宮沢賢治著)

宮沢賢治の短編「よだかの星」をテキストとして、命について、生きることについて、個々人の人生に照らし合わせて思考し、グループで共有しました。シンプルなストーリーを読み解き、自分の視点について深く考え、また、他者の視点から新たな気づきを得る機会となりました。

提言作成

参加学生たちは、4つのチームにわかれて、自分たちが当事者として体験した社会の課題についてまとめ、その解決のために自分たちに何ができるかをアクションプランにまとめました。児童養護施設に暮らす子どもたちの現状と課題、生活保護受給者の医療問題など、参加者の実体験に基づくリアルな課題が提示され、解決策として「若者によるつながりコミュニティの構築」や「マイノリティのための情報提供の仕組み」など、自分たちが解決のために何をできるかを具体的に考えた案が提案されました。

東京フォーラム

東京でのプログラムの集大成として、東京フォーラムを開催し、各界で活躍するリーダーたちの前で、学生代表がスピーチを行い、また、チーム毎に提言を発表しました。

ゲストメッセージ

どんな境遇にあったとしてもイキイキと、社会のため、人のために働くことのできる人たちを育てていける社会にしていただきたいと思います

安倍昭恵
内閣総理大臣夫人

物事には上手く行くときと、上手く行かないときがあります。自分は何のためにやりたいのかを常に考え、目標をもって、実現できるまで続けていくことが大事だと思います。幸福の女神には後ろ髪がありません

加藤勝信 衆議院議員/一億総活躍担当大臣

学生スピーチ

ビヨンドトゥモローで出会った仲間が私に新しい夢を与えてくれた、そのことへの感謝を私は一生忘れることはない

森瀬さおり
青森中央短期大学幼児保育学科(青森県立青森高等学校卒業)

両親の離婚後、育ててくれていた母親と死別し、以降、幼い弟や妹たちと共に暮らしている。生活のため、英語教師になるという夢を諦めて地元に残ることを決意し、将来の目標を見失っていた時に初めてビヨンドトゥモローに参加。様々な境遇にある同世代の仲間たちが、悲しい体験を将来の夢のきっかけにしていることにとてつもない刺激を受け、自分も将来、聖母園を設立するという夢を抱いた。今後は、ビヨンドトゥモローという、自分に夢を与えてくれた場所で、自分自身が、他の人が夢をみつけてあげられるきっかけになりたいと考えている。

ジャパン未来スカラーシップ・プログラムに参加している、森瀬さおりです。今月、青森県立青森高等学校を卒業し、来月から青森中央短期大学に進学します。

私は5人兄弟ですが、両親がいません。両親が離婚した後、親権のあった母親もがんで亡くなったからです。母親は、がんが見つかった年に手術をして、ほぼ再発はないだろうとお医者さんに言われ、私たち兄弟は、その言葉と母親に甘えすぎていました。母親が退院してからの日々、母親が病気であるということよりも、母親が家にいることが嬉しくて、負担をかけすぎていました。でも、負担をかけすぎていたということに気づいたのは、残酷にも、がんが再発した後でした。その時、私は、それまで自分がしてきたことを後悔しました。余命4ヶ月と宣告され、頭が真っ白になりましたが、あと4ヶ月の間、母親のそばに居続けようと決心しました。しかし、母親が亡くなったのは、余命宣告を受けてから1週間後のことでした。たったの一週間。私は母親に何もしてあげることができず、一週間を過ごしてしまいました。私は何度も、その時に戻って、母親に何かしてあげられたら、と思いましたが、でも、過去に戻れるはずはありませんでした。

だから私は、母親に何もしてあげられなかった分を、兄弟たちにしてあげようと決めました。そうすることで、亡くなった母親を安心させたいと思いました。それからの日々は、とてもつらく、大変でした。保険金の請求、相続の手続き、未成年後見人の決定、福祉手当の手続きなど、数えきれないほどの問題や手続きがありました。しかし、兄弟のおかげで、乗り越えることができました。ストレスをためこみ、ヒステリックになった時も、兄弟がなぐさめてくれました。そして私は、残された兄弟たちのため、そして母親の仕事を引き継ぐために、ずっと目指していた英語教師になるという夢をあきらめ、実家に残り、特に目標もなく、保育士の資格をとることにしました。

ずっと目指していた夢をあきらめたので、将来の目標を失ってしまいました。そんな時、担任の先生が勧めてくれたのがビヨンドトゥモローでした。昨年秋に東京で開かれたジャパン未来リーダーズサミットに参加してみましたが、想像していたものとは全く違って、とてつもない刺激を受けました。自分と似た境遇の人たちがいましたが、考え方が全く違いました。人生の中で悲しい出来事があったにも関わらず、それを将来の夢のきっかけにしているのです。

仲間たちに、自分が思っていることを全て打ち明けると、同じチームのメンバーが「そんなに頑張らなくてもいいんじゃない?」と言ってくれました。私はその言葉にとても救われました。ずっと、誰かにそう言ってほしかったのだと思いました。

そしてそのサミットで、私は、新しい夢をみつけました。私は将来、親のいない子供たちが暮らすための場所をつくりたいと思っています。ビヨンドトゥモローで出会った仲間が私に新しい夢を与えてくれた、そのことへの感謝を私は一生忘れることはないと思います。そして、みつけた夢を実現させるべく、弟たちと力をあわせながら、勉強に励むようになりました。

ビヨンドトゥモローという、自分に夢を与えてくれた場所で、今度は自分自身が、他の人が夢をみつけるきっかけになりたいと願い、今年から始まるジャパン未来スカラーシップ・プログラムに応募しました。

昨日からのオリエンテーション・プログラムに参加して、仲間たちと出会い、また大きな刺激を受けています。人が夢をみつける支えになりたいと思っていましたが、周りのみんなはもっと壮大なスケールの夢を持っていて、また自分自身が成長する機会になっています。これからの1年間、お互いに刺激を与え合い、学びあい、切磋琢磨し、夢に近づいていきたいと考えています。

ありがとうございました。

自分自身がセーフティーネットに支えられて生活してきた経験から、将来は貧困や社会的養護のもとで生活する人々のエンパワーメントに携わりたい

荒川未菜子
長野県上田高等学校

7歳の時から児童養護施設に暮らす。高校1年生の時からビヨンドトゥモローに参加し、人生の中で最も濃い1年になった。一緒にいられる時間は短くても、普段は話せないような話をできる人たちとの出会いがあり、自分は変わることができたと思う。周りの大人に支えられ、充実した生活を送り、大きく成長させてもらった経験から、将来は、日本だけでなく海外においても、貧困の中にあったり社会的養護を必要とする人々のエンパワーメントに携わりたい。その夢のためにも、大学で国際関係学や社会開発を学ぶことを希望している。

エンデバーに参加している、長野県上田高校の荒川未菜子です。

私は、1年前、人生で最も重要な決断をしました。それは、ビヨンドトゥモローに応募するということでした。

私は今、長野県の児童養護施設で暮らしています。施設に来ることになった時、私は小学校2年生とあまりに幼く、当時の記憶は断片的です。両親は離婚して、私は祖母と母と暮らしていました。両親が言い争う姿におびえたことや、母が私にたくさんのならいごとをさせたり、小学校受験をしたことを覚えています。

ある日、家にいた私は、突然現れた男性に連れられて、保護施設に行き、そこで数か月過ごした後に、今の施設に来ることになりました。なぜそこに来ることになったのか、今でも詳しい経緯は知らされていません。ただ、母が前から不安定だったこと、祖母が体調を崩していたことから、母が限界だったのではないかと思っています。その後、両親とは、たまに面会がありましたが、バングラディシュ出身の父は入国管理局に捕まって日本を去り、それ以来、父に会うことはありません。

1年前、私は、高校の紹介でビヨンドトゥモローの活動を知り、「わぁ、アメリカに行きたいなぁ」というだけの理由で興味を持ちました。でも、ビヨンドトゥモローについて調べてみると、私のこれまでの経験が、ここでなら活かせるのではないかと考え、心からビヨンドトゥモローの一員になりたいと思い、その一心で応募用紙を書きました。

それから1年が経ち、振りかえると、人生の中で最も濃い1年となり、本当にあの時、頑張って応募してよかったと思います。

それまで、自分が児童養護施設に暮らしているということが恥ずかしくて、消したいコンプレックスになっていました。でも、ビヨンドトゥモローでは、自分の境遇を仲間に隠すことなく話すことができました。そして、自分が施設に暮らしていることは、ネガティブなことではなく、そういう境遇だったから得られたものがたくさんあって、今の自分を作った、意味のある経験だということに気づくことができました。

また、夏のアメリカ研修や、ジャパン未来リーダーズサミットに参加して提言を作る中では、ただ、自分の考えを発表するのではなく、自分が動くことで社会をどう変えることができるのか、他者のために何ができるのか、ということを、どのプログラムでも考える機会があり、それは自分の中で新しい体験でした。

そして今回、ビヨンドトゥモローで、児童養護施設の高校生を対象とした新しいプログラム「エンデバー」が始まると聞いて応募し、ビヨンドトゥモローでの新しい1年が始まりました。

私は来月高校3年になり、受験生になります。4年制大学への進学を希望していますが、受験にあたっては、経済的な問題で、受けられる学校の数に限りがあったり、進学に際しての選択肢に制約があります。このビヨンドトゥモローの奨学金を受験費用にあて、進路選択の幅を広げたいと思いました。そして、自分のことを包み隠さず話すことのできる唯一の場であるビヨンドトゥモローに集まる人たちとの交流を続けていきたいと思いました。

私は今まで、自分自身がセーフティーネットに支えられて生活してきた経験から、将来は貧困や社会的養護のもとで生活する人々のエンパワーメントに携わりたいと思っています。具体的な職業はまだ決まっていませんが、日本国内の問題だけではなく、世界の問題にも興味があります。そのため、大学では、国際関係学や社会開発について学びたいと考えています。

今回、エンデバーには、児童養護施設に暮らすという共通項をもった8人が集まっています。まだ出会って2日目ですが、この8人だからこそできる会話が既に始まっています。

児童養護施設については、テレビなどで放映されるイメージで、偏見があり、かわいそうと思われることがありますが、私は、自分がかわいそうだとは全く思っていません。施設にいる子供たちの中には、多くの人がきいたらびっくりしてしまうような家庭背景を持っている子もいます。でも、私たち自身は普通の子供たちで、ただ、少し運が悪くて、そんな私たちが一緒に暮らしている場所だということを知ってもらいたいと思います。

これからの1年間、8人で活動をしていますが、この活動を通して、なにか、自分たちと同じように、施設に暮らす子供たちのためになることをできたらいいなと考えています。

ありがとうございました。

被災地訪問・仙台フォーラム

プログラム後半は、東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市・宮城県気仙沼市及び南三陸町を訪問しました。仮設住宅や慰霊碑への訪問や、現地の事業者の方との対話を通して、東日本大震災について学ぶと共に、震災後の日々を同年代の仲間たちがどう生きたかについて理解を深める機会を持ちました。プログラム最終日は、仙台にて開催された「仙台フォーラム」にて、プログラム期間中の学びの集大成を発表しました。

ゲストメッセージ

自分の命は自分で守る。これが基本です。犠牲者を減らすためには、やはり一人一人が自分の命を守っていただくということが大前提だと思います

戸羽太
岩手県陸前高田市長



今日よりも明日、明日よりも明後日、一歩、半歩前に進むと、五年、十年を経て、大きく前進することに繋がります

村井嘉浩
宮城県知事

学生の声

東北の仲間に出会えたことが、奇跡だと思っている。私の中で、皆が本当に大切な存在。あの時に、もしかしたら亡くなっていたかもしれない。皆がいて、生き残ってくれて、ありがとう

松藤江巳吏
高知大学人文社会科学部(高知市立高知商業高等学校卒業)

ビヨンドトゥモローの奨学金プログラムに参加する学生たちは、本プログラムを含む様々な活動に年間を通して参加し、人間的成長を遂げ、それを更に後進や広い社会へ還元することが期待されています。

ビヨンドトゥモローについて