教わったものを後の人生において活かし、世の中に貢献してください
小林 順光様
妙源寺(東京都葛飾区)住職/元日蓮宗宗務総長
私は戦時中の生まれです。
幸い私の家族に不幸はありませんでしたが、学校の同じクラスの生徒には、戦争で父親を失った子もおり、戦争を間近に感じた世代です。戦争孤児も多く、戦後3,4年経ち、親に連れられて上野公園に行った際、私はある出来事を体験しました。ベンチに座り「さあ、ご飯を食べよう。」と、おにぎりを手に取った瞬間、後ろから黒い手が伸びてきて、サッと取られてしまった事がありました。母親からは「声を出したり、探したりしてはいけないよ。」と言われました。
そのような時代に生まれ育った私は、食べる物にも困った戦争孤児を身近に感じ、白いご飯が食べられることの喜びを幼心に感じていました。戦争などの被害によって弱い子供が影響を受けるのは、とても悲しいことであり、戦災孤児の存在は、今も強く心に残っています。
このような経験や想いは、自分の真髄として今も生き続けています。
その後、宗政に関わる宗門人のひとりとして、東日本大震災の発生を経験いたしました。この震災にて宗門として、僧侶として、自分個人として何ができるか考え、私は全国の人々に震災孤児や里子活動を説明し、どのように支援できるかお子様たち並びに周りの人々に何ができるか考え、多くの方々から浄財を頂き支援活動をしてまいりました。そして平成25年からの4年間は、宗務総長(宗門における行政の長)として広島・長崎の慰霊を行いました。任期満了後これからの自分にできることを考えている時に、ビヨンドトゥモローとの出会いがありました。
世の中には様々な社会問題に対する活動がありますが、「若者のこれからを支える」という意味で、ビヨンドトゥモローに共感しました。多様な境遇の子供がいて、その中で向上心のある若者を支援できるということに魅力を感じています。自分の置かれた環境により、途中で学問をあきらめることほど酷なことはありません。僧侶とは社会に貢献する立場でありますが、私がそのような向上心のある学生を1人でも支えられたら、こんなに幸せなことは無いと心から思います。
ビヨンドトゥモローのプログラムに参加した学生達には、そこで教わったものを後の人生において活かし、世の中に貢献していく事で、同じような立場の人々や子供達を支えるような立場になってもらいたいです。知識や労働など、自分のできる範囲で社会に貢献してもらえる若者が、一人でも増えてくれることを願っています。自分の環境を憂い、なぜそうなったかを悩み続けるのではなく、そこから自分には何ができるかを考え、次へのステップを考えてもらいたいです。