子どもの貧困が引き起こす問題と支援する4つのアプローチ!
子どもの貧困とは?
そもそも、「貧困」には、生きる上で最低限必要な生活を満たしていない「絶対的貧困」と、居住する国や地域の水準と比較して貧しい「相対的貧困」があります。
相対的貧困は、居住している地域の所得中央値の50%に満たない所得しかないことを指します。(※厚生労働省の調査基準の場合。国や地域によっては所得中央値の60%や40%とされていることもある)2015年を例にとると、日本の所得中央値は245万円(1人世帯)なので、122万円以下(1人世帯)が相対的貧困と言われます。
(参照元:国民生活基礎調査(貧困率) よくあるご質問 |厚生労働省,P3)
では、子どもの貧困とはどのようなものなのでしょうか? 日本の子どもの7人に1人が相対的貧困と言われる状況と世帯別の貧困率を解説していきます。
日本の子どもの7人に1人が相対的貧困
子どもの相対的貧困率は、子ども全体に占める相対的貧困にある子どもの割合を指します。2000年以降の日本における子どもの相対的貧困率は13%台~16%台で推移しており、7人に1人の子どもが相対的貧困の状況下で生活していることが分かります。
調査年 |
2000年 |
2003年 |
2006年 |
2009年 |
2012年 |
2015年 |
子どもの貧困率 |
14.4% |
13.7% |
14.2% |
15.7% |
16.3% |
13.9% |
(参照元:貧困率の状況|厚生労働省を基に筆者作成)
また、ユニセフが2012年に発表した日本を含む35の先進国の子どもの貧困調査では、日本は貧困率が高い方から数えて9番目に位置しています。
(Measuring child poverty|ユニセフ,P5をもとに筆者作成)
先進諸国と比較しても、日本の子どもの相対的貧困率は高いと言えるでしょう。
ひとり親家庭の貧困率が高い
さらに、相対的貧困家庭を細かく見ていくと、ひとり親家庭の相対的貧困率は、母子家庭では51.4%、父子家庭では22.9%となっており、ふたり親家庭の5.9%に比べると非常に高くなっていることが分かります。
なお、所得中央値の50%のラインである「貧困線」の半分に満たない「ディープ・プア」家庭の割合は、母子家庭で13.3%、父子家庭で8.6%、ふたり親家庭で0.5%となっています。このことからも、ひとり親家庭の貧困率が非常に高いことが分かります。
参考
「第5回(2018)子育て世帯全国調査」結果速報|独立行政法人労働政策研究・研修機構,P7
子どもの貧困が引き起こす問題
ここまで、日本にも子どもの貧困があるという事実とひとり親家庭での相対的貧困率が高いというデータを確認してきました。では、子どもの貧困は子どもや社会にどのような影響を与えるのでしょうか?
自己肯定感の低下につながる
東京都大田区が区内の小学校5年生に行った調査によると、「自分は価値のある人間だと思う」かどうかについて、「とても思う」「思う」との回答は、非生活困難層で 63.0%だったのに対して、生活困窮層では 49.7%となっています。
貧困によって、周りの友達に比べて学習塾や習い事をするチャンスがなかったり、家族で旅行に行けなかったり、服を買ってもらえなかったりする経験が積み重なることで、自分には価値がないと考えてしまい、将来への夢や希望を失ってしまう原因になっていることがあります。
参考
大田区子どもの生活実態に関するアンケート調査|大田区福祉部福祉管理課,P29
教育格差が生まれる
貧困の状況下にある子どもは、進学率は低い傾向にあります。高等学校等進学率(2015年)は、全世帯で98.8%、生活保護世帯で92.8%となっています。また、高等学校等の中退率は、全世帯で1.4%なのに対して、生活保護世帯では3倍の4.5%となります。
さらに、大学等進学率(2016年)は、全世帯で73.2%、生活保護世帯で33.1%となっており、経済的に苦しい生活保護世帯の子どもの大学等進学率が、全世帯の半分以下になっていることが分かります。
このように、貧困が原因で、教育の機会が少なくなり、教育の格差が広がっていきます。また、教育格差が将来の所得にも影響を与え、貧困が繰り返されるという負の連鎖が起こります。
参考
子供の貧困に関する指標の推移|内閣府
社会的損失につながる
日本財団が実施した子どもの貧困放置による経済的影響の調査研究によると、子どもの貧困が改善した場合、生涯所得が2.9兆円、税・社会保障の純負担額が1.1兆円、正規雇用が9,000人増加するとされています。
言い換えると、子どもの貧困を放置することは、将来の所得の減少と財政負担の増加を意味することであり、社会的な損失につながるのです。
子どもの貧困を支援する4つのアプローチ
ここまで見てきたように、子どもの貧困は子どもから自己肯定感を奪うだけでなく、教育格差を生み出し、将来の所得へと影響を与えます。しかし、子どもの現在、将来が生まれた環境によって左右されることがあってはなりません。そのために、官公民連携で推進している「子供の未来応援プロジェクト」が提示している支援のための4つのアプローチをご紹介します。
教育支援
幼児期から高等教育段階まで、教育費の負担を軽減する様々な支援が行われています。例えば、義務教育段階では経済的な理由により就学が困難な家庭に対して、給食費や学用品費の費用を負担する就学援助制度があります。
また、教育相談を受けられるようにスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーを配置したり、放課後子ども支援教室、家庭教育支援など地域による学習支援が行われています。
経済支援
経済支援には、ひとり親家庭の生活の安定と自立を助け、児童の健全育成を図ることを目的とした児童扶養手当や配偶者がいないけれど児童を扶養している人の経済的自立の助成と生活意欲の助長、扶養している児童の福祉を増進するために資金を貸し付ける母子父子寡婦福祉資金貸付金制度などがあります。
また、養育費の確保をするための相談や子どもと離れて暮らしている父、母との面会交流の相談を受け付けている養育費相談支援センターは、メールや電話で気軽に相談することができます。
参考
養育費相談支援センター|公益社団法人家庭問題情報センター
生活支援
生活支援では、一定期間家賃相当額を支給する住宅確保給付金の支給や就労のために就労機会の提供、中長期的な就労訓練なども利用することができます。
また、子どもの生活・学習を支援する事業が推進されています。そして、子どもを支援する人材を確保するために、児童養護施設等の人員配置の充実や里親制度の啓発事業推進なども行われています。
就労支援
就労支援では、「親の就労支援」「親の学び直し支援」「就労機会の確保」の3つを柱として、ひとり親の重点的な支援が行われています。
例えば、就業の相談や情報提供を受けたり、就業支援の講習会が実施されたりしています。また、在宅での就業を希望する人のために、在宅就業コーディネーターを配置してサポートを進めています。
まとめ
子どもの貧困対策の推進に関する法律の第一条には、下記のことが記されています。
子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、全ての子どもが心身ともに健やかに育成され、及びその教育の機会均等が保障され、子ども一人一人が夢や希望を持つことができるようにする
(引用元:子どもの貧困対策の推進に関する法律|電子政府の総合窓口e-Govより一部抜粋)
しかし、7人に1人の子どもが相対的貧困の状況下で生活しており、教育の機会が失われ、夢や希望を持つことが難しくなっています。官公民連携で子どもの貧困にアプローチしているとはいえ、まだまだ厳しい環境にいる子どもや家庭は存在します。
ビヨンドトゥモローは、貧困や虐待、ネグレクト、親との死別・離別などの困難を経験した若者たちを、返済が必要ない給付型の奨学金プログラムと人材育成プログラムを通して応援している一般財団法人です。貧困などの逆境を経験したからこそ、他人の気持ちが分かり、社会をより良くしようとするリーダーになれるという理念のもと活動しています。
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また、ビヨンドトゥモローに出会った学生のストーリーはこちらからご覧いただけます。
参考
小児に対するネグレクトと虐待の概要|MSDマニュアル家庭版
子ども虐待とは|オレンジリボン運動
児童虐待防止法制度|子どもの虐待防止オレンジリボン運動
【おはなしオレンジリボン】ネグレクト「かまってくれない」|YouTube
ネグレクト(育児放棄)とは?ネグレクトの判断基準は?もし見つけたらどうする?|リタリコ発達ナビ