公益財団法人教育支援グローバル基金|ビヨンドトゥモロー

学生インタビュー:幸せな家庭が一気に崩壊。過去に向き合ったからこそ見えてきた未来!

高校生の時に両親が離婚。裁判や引っ越しにより精神的に苦しい時期を経験した谷山さん。幸せな日常が一気に崩れるという逆境が、ビヨンドトゥモローとの出会いでポジティブなエネルギーに変わっていきます。ビヨンドトゥモローの参加メンバーだからこそ気付けたこととは?

ごく普通の幸せな家庭が一気に崩れ去った…悪いイメージが頭から離れなかった高校生時代

2019年3月オリエンテーションにて

谷山さんのこれまでの生い立ちを教えて頂けますか?

幼稚園からずっと大阪で育ちました。もともとはお父さん、お母さん、僕、2つ下の妹の4人家族で暮らしていました。でも、高校1年生の時に、父に女性がいることのが判明します。お母さんが涙目で僕に報告してきて……横で中学2年生(当時)だった妹が泣いていたのを、今でも鮮明に覚えています。 その時は本当にショックで、「これからどうしたらいいんやろう」とか、「家族はどうなってしまうんやろう」って、不安しかない気持ちでした。 それから、両親が頻繁にケンカするようになって。ケンカはだんだんエスカレートして、夜中に、ケンカの声で起きたり、警察呼んで止めてもらったりしてて、その時は恐怖しかなかったです。それからしばらくして、お父さんは家から出て行っていました。その後、お母さんが裁判を起こし、僕達3人は、父に分からないように引っ越して暮らし始めます。 それまでは、ちゃんと高校にも行かせてくれて、部活もさせてくれて、毎日美味しいご飯が出てきて、服もゲームも買ってくれて、ごく普通の幸せな家庭でした。でも、それが一気に崩れ去っていったんです。

お父さんに対してはどのような気持ちでしたか?

お父さんに対しては、「なんでそんなことするんだろう」って。でも、「やっぱりか…」という気持ちも少しあったかもしれないです。 お母さんとお父さんのケンカが激しい時期は、高校で授業受けたりしてても、ずっとモヤモヤするというか……「家来てないかな」とか「なんかされてないかな」とかずっと気がかりで、高校1年生から引っ越しをする高校3年生の初めまでは、ずっと悪いイメージが頭の中につきまとっている状態でした。

ビヨンドトゥモローでは、何を言っても恥ずかしくない、本気になれる環境がある

ビヨンドトゥモローに参加するきっかけを教えて頂けますか?

きっかけは、学校に貼ってあったポスターです。奨学金紹介ポスターの一部に、ビヨンド(ビヨンドトゥモローのこと)のことが書いてありました。すごく仲のいい友達が「これ一緒に受けてみいひん? 」って声掛けてくれたんです。 一番目に留まったのは、返さなくていい奨学金が頂けることと、リーダー育成プログラムです。奨学金も頂けて、リーダー育成のプログラムもあるんやったら、チャンスだから受けてみようと思ったんです。

なるほど。友達の一言でビヨンドトゥモローと出会ったんですね! 実際にビヨンドトゥモローに参加したときの印象を教えて頂けますか?

まず、応募する段階で、一次試験の提出課題を考えることが自分にとってすごくよかったです。一次試験の課題は、「自分のバックグラウンド」「高校の時頑張っていたこと」「将来やりたいこと」を作文にまとめるというものでした。この時に、今まで頑張ってきたことや自分のバックグランドを俯瞰的に見ることができました。特に、つらかった出来事や時期を、初めて自分を見つめ直せたのがすごく良かったです。 ビヨンドに参加して直感的に思ったのは、何を言っても恥ずかしくないし、本気になれる環境やなってことです。 というのも、一番最初の顔合わせで、参加メンバーがそれぞれ自分の体験を共有する「バックグラウンド共有」の時間があります。その場で、これまでの出来事を消化できない参加者もいます。でも、ここにいるってことは、何かしたくて、前に進みたいって気持ちがあるんやなって、「自分はこうしたい」「これになりたい」みたいなのをすごく熱く感じました。 バックグラウンドを共有していく中で、普段は言えない自分をさらけ出してたときに、みんなが共感してくれるっていうか、さらけ出せる場所なんやって認識したっていうか…。めっちゃ仲良い友達なら話せるんですけど、初めて会った人にはできないです。でも、ビヨンドではできちゃう。 先輩からも刺激を受けました。初めて会ったときから、「自分はいまこんなんしてて」とか「こういうの目指してるんやけど! 」みたいな話をしてくださって、すごく熱を感じました。エネルギーをたくさんもらいましたね。

米国サマープログラム2019にて現地の学校訪問(写真中央)

どうして自分のことをさらけ出すことができてしまうのでしょうか?

自分のバックグランドを伝えても、ちゃんと聞いてくれる「安心感のようなもの」があると思っています。ビヨンドに来る人は、絶対何かつらい思いや経験をしてきています。だからこそ、分かってくれるんじゃないかって、理解してくれるんじゃないかなって思うんです。他の友達との違いを挙げるなら、そこの差なんじゃないかなって思います。 友達に伝えても「そうなんや大丈夫? 」で終わっちゃったり、「かわいそうやな」って言われることもあります。でも、なんかどうなんやろうって……。自分の中では、かわいそうはしっくりこないんです。 「かわいそうやな」って言われたら、そこで一気に他人事として突き放されている気がします。一言で片づけられてしまったという感じです。これ以上は話せないってなっちゃう。 ただ、僕自身もビヨンドで出会った人の話を聞いていて「かわいそうやな」って思うってしまうこともあります。でも、それを口に出すのは違うなって思うんです。ビヨンドの理念じゃないですけど、逆境をバネにしてみんな前に進んでいる気がして、そこで慰め合いはないです。それがあったから、みんなで頑張っていこうやっていう雰囲気を感じました。

偏見を持たずに受け止めること、主体性の大切さ。気付かせてくれたのはビヨンドの同期と先輩

サミット2019にて自身の体験を参加者に共有している場面

ビヨンドトゥモローに参加して、谷山さんの中で変化したことはありますか?

2つあります。1つ目は、何事にも偏見の目で見ることがなくなったことです。ビヨンドのメンバーもいろんなタイプの人がいて、過去の生い立ちも全然違って、これまでの自分だったら偏見を持ってしまったかもしれません。でも、ビヨンドに参加してみんなの話しを聞いたり、ビヨンドの雰囲気に触れてからは、相手の話を一回受け止めてから話せるようになったと感じています。これは、自分の中では大きい変化です。 例えば、普段ニュースを見てても、最初から賛同したり否定するのではなくて、「それはどういうことなんだろう? 」って考え出している自分がいます。そうやって考えると、気付けることが多くなりました。 2つ目は、主体性の大切さに気付いたことです。アメリカのサマープログラムに参加させてもらったとき、初めて参加したプログラムよりも、噛み応えがないと思ったんです。それで、良くしてもらっていたビヨンドの先輩に相談しました。 先輩と話して気付いたことは、プログラムに参加して「へぇ~」と思っているだけだったということです。自分事として、自分はどうしたいのかを考えられてなかったなと思ったんです。それに気付いてからは、「この人はどう思っているんやろう? 」って意識するようになりました。主体的に参加するか受け身になるかで、同じ体験をしても受け取れる内容が違うと学びました。主体性の大切さに気付いたきっかけです。

大きな気付きをくれたビヨンドの参加メンバーは、谷山さんにとってどのような存在ですか?

先輩と同期ではちょっと違うと感じています。先輩は、すごくエネルギーをくれる存在です。自分の行動を、背中で見せてくれるという人たちばかり。 同期は、同い年ってこともあるので、切磋琢磨して一緒に頑張り合える存在です。ちょっと張り合う部分もあります。(笑) 口には出さないですけど「僕も負けてないから」みたいな感じがありますね。 先輩も同期も、どちらもすごく刺激をくれる存在なのは間違いないです。それに、全国に友達がいるのも大きいです。先輩の中には、コロンビアに留学している方だったり、インドネシアに留学していた方がいて、日本だけにではない世界の話を聞けるのが刺激になっています。自分をさらけ出すことができて、刺激し合える友達と出会えただけでも、ビヨンドに来て良かったなってすごく思います。

参加したプログラムの中で、印象的な経験があれば教えて頂けますか?

秋に参加したプログラムでは、リーダーという立場で参加させてもらいました。プログラムの内容は、スカラーシップ・プログラムに参加している僕たちが、全国から集まった約60人の高校生とグループになって一緒に過ごし、最終的には提言政策を行います。 初対面の高校生を引っ張っていくのが大変だったんですけど、バックグラウンド共有の時間を通して、少しずつチームとしてまとまっていきました。自分の中では、良いチームになれたんじゃないかなって思ってます。提言作成も上手くできたなって。リーダーを経験することで、これまでの自分と比べて緊張しなくなりました。この経験があったからこそ、自分は自信を持てるようになったと思います。 それに、このプログラムだけではなくて、いろんなプログラムに参加したことで、1年前の自分よりも今の自分の方が自信がついています。ビヨンドに参加することでいただけるお金の支援も大切なことですけど、それ以上にプログラムで経験できることの価値が大きいと思います。

おじいちゃんとおばあちゃんのお米を商品化したい!

サミット2019にて最終日の提言発表会(向かって右側)

最後に、これから実現したいことや今の考えを教えてください。

ビヨンドに参加する前は、明確なビジョンややりたいことはありませんでした。でも、自分を見つめ直す機会をたくさんもらって、将来のことをポジティブに考えられるようになりました。それが、学生のうちに、おじいちゃんおばあちゃんのお米を商品化して市場に出すことです!  おじいちゃんとおばあちゃんは、鳥取の田舎に住んでいて、お米をいつも送ってくれているんです。それに、毎月仕送りをしてくれたり、電話をかけてきてくれたり。そんなおじいちゃんとおばあちゃんが大好きで、恩返ししたいなって気持ちがあります。 もっと先の将来の大きな夢っていうのは、まだ決まっていません。今考えていることは、おじいちゃんとおばあちゃんが住んでいる鳥取の村や地域をどうしたら活性化できるかなっていうことです。これから社会でたくさん経験を積んで、大きな夢ができてきたらいいなって思っています! 最後に、いま振り返ってみると、必ず助けてくれる人がこの世の中にはいると思います。僕にとってビヨンドがその1つでした。 「生きて、笑って、ご飯が食べれてるだけでなんとかなる! 」苦しい経験やしんどい思いをした人にはそう伝えたいですし、僕自身もそのことを忘れずに生きていきたいです。