藤本翔

藤本翔

埼玉県立久喜北陽高等学校

“人生で初めて、変わりたい、と思った。それは、ありのままの自分の姿を受け入れてくれる、ビヨンドトゥモローの仲間がいてくれたからだと思う”

幼少期から暮らす児童養護施設で小学生の時にいじめに遭った経験から、将来、そのような想いをしている子供たちを支えられる仕事をしたいと考えるようになった。高校2年生の時にエンデバーに参加。口数が少なく、本音を言うことがなかった自分が、エンデバーの活動を通して、人生で初めて「変わりたい」と思った。2年目となるエンデバーの活動では、自ら積極的に行動を起こせるようになり、また、新しい仲間を支えられる自分になりたい。将来は、大学に進学して教員免許を取得し、児童養護施設の職員になることが夢。

ストーリー

2歳の時に児童養護施設に来て暮らすようになった私には、家庭の記憶というものはほとんどありません。廃車となった車の中で、父親と父親の交際相手と弟と暮らしていたところを保護され、今、暮らしている施設に入ることになりました。以来、父親と会うことはほとんどなく、児童養護施設に暮らすのが自分にとっては自然なことで、なげくこともなく育ちました。もちろん、辛いことがなかったわけではありません。小学生の時、暮らしている児童養護施設の寮で、高校生にいじめられ、暴力を受ける日々が続いたことがあります。施設の職員に助けを求めたら、いじめは更にエスカレートしてしまい、ただただ耐えるだけの日々でした。でも当時、私が暮らす児童養護施設では、年配の子が小さい子をいじめるというのは日常的に起きていて、みんなが暴力に耐えていました。

その経験がきっかけで、私は、児童養護施設の職員になり、自分のように辛い状況にある子どもたちに寄り添いたいという夢ができました。児童養護施設から大学に進学する人は多くありませんが、自分の周りで進学した人がいたこともあり、自分も、大学に進学して、児童養護施設の職員になるための勉強をしようと思うようになりました。

しかし、高校に入っても、その夢を漠然と抱えたまま、具体的な行動を起こすことができないままでいました。私の暮らす児童養護施設では、大学に進学する人は数年に一人いる程度で、大学に行こうという気持ちはあっても、具体的に何かを頑張るということができないままでいました。

そして、自分の夢について、友達に話せるかというと、そういうわけではありません。高校の友達とは、児童養護施設に暮らしていると言うと、その場の雰囲気を重くしてしまう気がして、言わないことがほとんどです。だから自分の夢についても、友達に言うことはなかったし、本音を隠して、自分の意見をあやふやにして、自分をつくってきたように思います。でも、心のどこかでは、共感を求めていて、誰かと話したくて、そんな時に出会ったのが、ビヨンドトゥモローでした。

高校1年の終わりに、施設の職員から、ビヨンドトゥモローのチラシをもらいました。それまで、外部のイベントに行くことはなかったので、不安はありましたが、自分と同じように施設に暮らしている人に会ってみたいという気持ちがあったのだと思います。

そして3月に初めてのプログラムがあり、初対面の人たちと打ち解けられるのか、不安な気持ちいっぱいで臨みました。最初の夜に、「体験共有」という時間がありました。そこで、自分のこれまでの話を全て話して、気が付いたら打ち解けていました。4日間のプログラムを通して、緊張することなく人と話していて、それは人生で初めての体験でした。

そしてビヨンドトゥモローで出会った仲間たちは、自分と同じように児童養護施設に暮らし、自分と同じような年代でありながら、将来をみすえて行動していて、ただ漫然と大学に行こうと思うだけで満足していた自分が恥ずかしくなりました。

ビヨンドトゥモローでの様々な活動が刺激となり、「変わりたい」と思うようになりました。変わりたい、と思ったのは、人生で初めてのことで、自分の意見をきちんと言えるようになりたい、そして変わるとするならば、エンデバーで変わるしかない、と思いました。それは、ビヨンドトゥモローが、隠すことなく何でも言えて、自分が自分でいることのできる場所だからだと思います。もしもビヨンドトゥモローに参加していなかったら、今頃自分は何をしていたのだろうと考えると、怖くなるほど、充実した時間を過ごすことができています。ビヨンドトゥモローで出会った仲間との会話を通して、児童養護施設の職員になるという夢に広がりもでました。職員になるだけではなく、社会福祉士の資格を取り、児童養護施設で、保護された子どもを受け入れるだけでなく、家庭に暮らしている子どもの中で、危険な状況にある子どもを保護する仕事にも関心を持つようになりました。

児童養護施設に暮らす子どもは、夢がなく、なんとなく就職でいい、と思って暮らしている子たちが多いように思います。でも、自分は、将来、児童養護施設の職員となり、そういった子どもたちの声に耳をかたむけ、一人ひとりによりそうことで、その子たちも本当は夢を持っていることがわかるようになるのではないかと思っています。そのために、今は、勉強に力をいれ、自分の将来の夢に近づいていきたいと思っています。