一般財団法人教育支援グローバル基金|ビヨンドトゥモロー

TOMODACHI ビヨンドトゥモロー グローバル・リーダーシップ・アカデミー2014 開催報告

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概要

一般財団法人教育支援グローバル基金は、2014年3月に、公益財団法人米日カウンシル-ジャパン・米国大使館を中心とする官民パートナーシップ「TOMODACHIイニシアチブ」の一環として、TOMDACHIビヨンドトゥモロー グローバル・リーダーシップ・アカデミー2014を開催致しました。これまでTOMODACHIイニシアチブの下に開催された各プログラムで渡米した高校生・大学生のうち、選考によって選ばれた72名が東京に集結しました。3日間の対話・ディスカッション形式のプログラムを通して、世界の自然災害(ハイチ大地震、スマトラ島沖地震/インド洋津波、フィリピン台風)の事例と自らの震災での経験や自然災害分野の専門家からのインプットを基に提言を取りまとめました。2015年に国連防災世界会議が仙台で開催されることを踏まえ、東日本大震災を経験した自分たちだからこそ世界に伝えたい教訓を議論しました。各界のリーダーたちが出席する閉会式で参加学生は提言を発表し、国連防災世界会議を担当する外務省地球規模課題審議官に提言として届けました。

目的

  • 参加者たちが、世界をとりまく地球規模課題について理解を深め、必要とされるアクションについて議論、思考する。
  • 参加者たちが、様々な領域で活躍するリーダーたちとの対話を通して、将来自分たちが果たしたい社会的な役割について考え、具体的なビジョンを描く。
  • 異なるプログラムで米国滞在を体験した学生たちがTOMODACHI世代としてつながり、共に未来に向かって歩いていく仲間としての絆を深める。

日程・開催地

2014年3月7日(金)~9日(日)
国立オリンピック記念青少年総合センター(東京・渋谷区)
メリルリンチ日本証券 東京オフィス(東京都・中央区)
東京アメリカンクラブ(東京・港区)

参加者

参加学生72名

これまでTOMODACHIイニシアチブの下で渡米した東北出身の高校生63名と大学生9名。大学生は、高校生のチームをまとめるチームリーダーとして参加しました。将来、グローバルに活躍するリーダーとなることを志す学生たちが書類審査によって選抜されました。

メンター

本アカデミーの支援企業バンクオブアメリカ・メリルリンチの社員の方々が、メンターとして、各チームに参加しました。プレゼンテーションの準備や、社会人としてのキャリア形成など、様々な面で学⽣にアドバイスを頂きました。

スピーカー・専門家

学生たちが世界の自然災害について提言をまとめる上で、各分野において実際に活動を行っている団体のリーダーからインプットをいただくべく、インタビューセッションを行いました。ハイチ大地震、スマトラ島沖地震/インド洋津波、フィリピン台風のそれぞれの分野で、実際に災害で被害にあった地域の人々に対して実際に活動をしているエクスパートがお越しくださいました。

参加学生の声

この余韻、なんとも言えない雰囲気。未だにうまく言葉にできない。結果は提言発表会で最優秀賞をいただいた。信じられなくて絶叫・号泣。チームのみんなが団結したからできたことだった。今回の最優秀は自信になった。私が私を信じなければ誰も不安でついて来られないね。自分はビヨンドで、もう一度自分として生まれてきたみたい。
太田古都(岩手県立不来方高等学校2年)

みんなこれからの夢とかやりたいことを聞いても、私たちができると思ってビヨンドもTOMODACHIも支援してくれている。そういうことをちゃんとわかって、踏まえて、これからちゃんと進んでいける人たちがちゃんとアカデミーに集まっているのだということを感じることができた。だから、私も進んでいかないといけないなと思った
佐々木真琴(岩手県立宮古高等学校2年)

プログラム概要

課題設定

「東日本大震災を経験した若い世代だからこそ、世界に提案したい自然災害へのアクションプラン策定」

2015年3月に、仙台で国連防災世界会議が開催されます。世界の自然災害のリスクを軽減し、悲劇を減らすための世界的な戦略を議論するこの会議を踏まえ、自然災害へのアクションプランを提言としてまとめます。チームごとに策定したアクションプランは閉会式で発表し、集まったゲストよる投票を行い、1位の班は国連防災世界会議を担当する外務省の地球規模課題審議官に提言を届けます。

テーマ

1. フィリピン台風
2. ハイチ地震
3. スマトラ島沖地震/インド洋津波

レクチャー『グローバル・アジェンダとは』

2泊3日のアカデミーの初日、世界経済フォーラム(ダボス会議)のGlobal Agenda Council Education & Skillのメンバーでもある石倉洋子氏にお越し頂き、東日本大震災を経験した東北の学生が、地球規模の課題について考える意義は何か、世界の自然災害に対する取り組みに貢献できることは何かについてレクチャーをして頂きました。

自然災害は世界でいつでもどこでも起こりうる。人的被害も経済的被害も発生する。国境を越えることも多くある。地域全体が被害に遭ってしまうと、復興、復興と言われても、そう簡単にはできない。皆さんは東日本大震災という、世界的に見ても最近の非常に大きな自然災害を経験した方々なので、世界のアジェンダに対して、物が言えるのではないか。色々な解決策、そして更なる改善策は、頭で考えるよりも、経験した人にしか導き出せないものが沢山ある。皆さんは大変な経験をしたと思いますが、だからこそできることがあると思う。 石倉洋子

ニーズの理解

参加学生は、アクションプラン策定に向け、自然災害発生時におけるニーズを把握することから始めました。3年前何が起こったか―自らの被災体験を振り返り、それぞれの自然災害との共通点を考え、地球規模課題としての自然災害に取り組むために必要とされていることを議論しました。

共有された声

東北とフィリピンを比較すると、漁業の復興という点で共通点があると感じた。漁船を失い仕事がなくなり、収入源を失う。これは東北でもフィリピンでも同じことが言えるなと思った。しかし、日本は割りと早い時期に支援で違う地域の人から船をもらうなどがあったが、フィリピンはそうはいかなかったのではないかと思う。また、日本は地震が発生してから避難所の整備も医療支援もしっかりしていたが、フィリピンはそういった点で寸断しているところが多かったのではないかと思う。

スマトラ島沖地震/インド洋津波と東北を比べると、どちらも震災後すぐに各国から支援が集まったものの、様々な理由からそれらが隅々にまで行き届かなかったことが共通点として挙げられると思う。しかしスマトラ島沖地震ではもともと地震や津波についての知識がなかったことに加え、感染症や伝染病といった二次災害が広がったため被害が大きくなってしまったことが相違点。

専門家インタビュー

フィリピン台風

乗竹亮治
Project HOPE コンサルタント

フィリピン台風では、4~6千人の死者がでた。死者数2~3万人の予想よりは少ないが、その数を多いととるか少ないととるかはとても難しいことです。自分たちの冷静で過酷な判断でいうと少ないという判断であるし、フィリピンよくやったと思います。ただ、実際に考えてみると6千人という数はすごい人数。災害支援の仕事をする上で、こういったことに向き合うのは逃れられない宿命だと思います。

ハイチ地震

古川 千晶
特定非営利活動法人難民を助ける会(AAR Japan) 支援事業部主任

ハイチには防災の習慣はない。学校に行っていない子どもが多く、識字率も半分以下。教養のある家庭で育った子どもたちは、アメリカに行ってしまう。おのずと知識のない人がハイチに残らざるを得ない。私が接したハイチの若者には、諦め感が漂う。生まれたときから貧しく、自分達は外の世界の人たちとは違うという割り切り感がある。雇用の創出などにお金が回れば状況は変わるかもしれない。

スマトラ島沖地震/インド洋津波

浅川 葉子
特定非営利活動法人ジェン(JEN)情報マネージャー

津波の被害にあったところは漁業に従事している方が多い。ものは流されたが、スキルや漁業の経験は流されない。紛争でもスキルと経験は誰にも奪えない。ものを支援すれば、自分達の経験やスキルを使って自分達の生活を支えていくことができるので、その足りなくなってしまったもののサポートをする。私たちが現場で一番考えているのは、いかに自立を支援するかということ。緊急支援だが、緊急のときにいかに自立を支援できる活動をできるかということに心を砕いている。

リーダーとの対話

参加学生は、2泊3日のプログラム中、様々な分野で活躍されているリーダーと対話しました。高校・大学時代にすべきこと、キャリアについて、そして、今後どのように社会に貢献していくべきかなどについてアドバイスを頂きました。

高橋 大就  一般社団法人東の食の会 事務局代表
乗竹 亮治  Project HOPE コンサルタント
原 聖吾   マッキンゼー・アンド・カンパニー
藤田 華子  群馬大学医学部
長野 りえ  NPO法人人身取引被害者サポートセンター ライトハウス
松田 悠介  NPO法人Teach For Japan 代表理事
三橋 乃佑里 アメリカ大使館 ユースアウトリーチスペシャリスト
矢部 寛明  一般社団法人アショカ・ジャパン ユースベンチャープログラムリーダー
吉岡 利代  ヒューマン・ライツ・ウォッチ シニアアソシエート

閉会式

東日本大震災から丸3年―。参加学生はそれぞれの体験を振り返りました。あのような辛い思いをもう二度としたくない。世界中の誰にも同じ思いをしてほしくない。辛い経験があったからこそ、世界に果たすべき役割がある。その一途な思いのもと、学生たちは集いました。

2015年3月に仙台で開催される国連防災世界会議を踏まえ、世界の自然災害への取り組みに対して提言を発表する東北被災地の学生たち。日本政府、米国政府、民間企業、アカデミア、メディア、市民団体など、各界を代表するゲストが集まり、学生たちの提言に耳を傾けました。マルチステークホルダーが集まったその場は、自然災害リスク削減というグローバル・アジェンダを、東北の学生が中心となり、東北が、そして日本がイニシアチブを取り、解決に向けて取り組むためのプラットフォームとなりました。

スペシャルメッセージ

カート・トン
在日米国大使館首席公使

リーダーには、3つの要素があると私は思います。1つはCourage(勇気)―ここに集まっている若い人たちは皆、東日本大震災からの復興やその他の難しい社会問題に取り組む勇気を持っていると思います。2つめはConfidence(自信)―皆、このアカデミーで自信を持つようになったのではないでしょうか。3つ目はCuriosity(好奇心)―世界中のリーダーたちを見ると、必ず好奇心を持っています。皆さんは、世界の問題にこれから一生懸命取り組むような、勇気、自身、そして好奇心を持っているのではないかと思います。皆さんには、本当に、これからの日本のグローバルリーダーになってほしいです。

ティム・ラティモア
バンク・オブ・アメリカ・グループ 在日代表
メリルリンチ日本証券株式会社 代表取締役社長

私たちは、継続支援の大切さを実感し、継続的に震災復興に関わりたいという気持ちを持っています。東北の復興に立ち会い、更には、世界各地で頻繁に起きている自然災害にどのように対応していくことができるかを、ここにいる皆さんと考えていきたい。アカデミーに参加された皆さんが将来、この地球のリーダーとして活躍されるような人材になることを心から願っていますし、これからも支援を続けていきたいと思います。何事も続けていくことが大切です。皆さんが「レジェンド」となることを期待しています。

橋本大二郎
武蔵野大学客員教授
慶応義塾大学特別招聘教授
前高知県知事

まもなく震災から3年。人々の記憶は確実に薄れてきます。ですから、被災した子どもたちを応援しようというだけだとどこかで息が切れてくるかもしれません。しかし、世界の仲間と結び合って、ふるさとの応援をしていく。また、そういう人をつくっていく。その人づくりのノウハウを蓄えていく、というプログラムであれば、何十年も色褪せることはないと思います。高校生、大学生のみんなにもずっと長く継続するエネルギーを持ち続けて欲しいなと思いますし、また、ビヨンドトゥモローはそのような子どもたちを手助けしていくプログラムであり続けたいと思います。

安倍昭恵
首相夫人

東日本大震災から3年になります。多くの方の命が犠牲になりました。心よりお悔み申し上げます。しかし、この震災をきっかけとして、たくさんの素晴らしい関係が生まれ、友情が生まれ、日本人の意識が変わってきたように思います。2万人を超す亡くなった方たちの魂が、今、私たちに何かを語りかけているように感じています。私たちはそれをしっかりと無駄にしないように受け止めていかなくてはいけません。私は、人にはそれぞれ皆、使命があり、それぞれが経験をすることについいても、その使命を果たすための何らかの意味があるのだと考えています。被災した皆さんは、本当に辛い、大変な経験をされたと思いますが、それだけに、きっと大きな使命を持っているのだと思います。被災地の復興だけではなく、日本のために、世界のためにどうかこれからも活躍していただきたいです。

デーブ・スペクター
(株)スペクター・コミュニケーションズ 代表取締役  放送プロデューサー

みなさんの一番の武器は、若いことであるということ。東日本大震災という悲惨な出来事がきっかけで始まりましたが、被災地、自分たちの文化、生まれ育ったところ、全てが今大変に注目されています。これをチャンスとして使って下さい。自分の人生のためにも、そして亡くなられた人のためにも、そして自分の出身の地域のためにも、使ってください。

学生プレゼンテーション

9つのチームがそれぞれに、2泊3日の集大成を閉会式で発表し、ゲストの方に投票していただき、最優秀チームが選ばれました。「フィリピン台風」をテーマにアクションプランを作成したチーム3が最優勝賞に選ばれました。作成された提言は、2015年に開催される国連防災世界会議を担当する外務省の地球規模課題審議官に提出しました。

講評

香川剛廣
外務省地球規模課題審議官 大使

皆さん被災地の高校生ということもあり、今回テーマとなっている、ハイチ・スマトラ・フィリピンそれぞれの被災地にも共通するような問題を鋭く捉えている点、本当に良かったと思います。共通するテーマとして、忘れない、風化させないということをいくつかのチームが訴えていましたが、まさに若い世代の皆さんが「忘れない」と努力していく、働きかけていくということ自体が、大きな防災の中核をなす努力になるのだと思います。世界と繋がりつつ、世界と協力して一緒になってそういう取り組みを進めていくことが非常に大切です。

2015年3月14日から18日まで仙台で国連防災世界会議が開催されます。防災会議のテーマとして、Build back better―よりよい社会をコミュニティをつくりあげていくためにはどうしたらよいのか、あるいはbounce forwardという言葉も使っています。要するに、単に元に戻すのではなく、より良い世界をつくりあげていくための努力を世界と協力していきたいということです。ぜひここにいる皆様のご協力を得ながら、会議を盛り上げて参りたいと思います。

学生代表スピーチ

遠くの存在であったはずのアメリカの人々が心を寄せ、涙を流してくれた。だから私には語る意味があるかもしれない、そう思うようになりました。私は、一人じゃない。辛い経験をした自分たちだからこそ、社会に伝えられることがある。 佐藤迅
宮城県農業高等学校3年

震災を経験して、人の温かさに気づき、当たり前にいる存在を大事にしようと思える自分に生まれ変わることができました。震災は私にとって、とても辛い出来事でしたが、私を確実に強くさせてくれました。 浜登美海
岩手県立釜石高等学校1年

リフレクション

プログラムの最後には、バンク・オブ・アメリカ・グループの在日代表と社員メンターの方々とのパネルディスカッションが開催されました。人生の本質に迫る学生たちの質問に、真摯に応えるリーダーたち。2泊3日のプログラムは、熱い議論で締めくくられました。

メディア掲載

岩手日報『若者 世界へ防災提言 被災3県生徒ら発表』(2014年3月10日)

読売新聞『15歳 自分も復興世代』(2014年3月11日)

支援企業


バンクオブアメリカ・メリルリンチ

TOMODACHIについて

TOMODACHI イニシアチブとは、東日本大震災後の日本の復興支援から生まれ、教育・文化交流、起業支援、指導者育成といったプログラムを通して、日米の次世代のリーダーに投資する官民パートナーシップです。日米関係の強化に深く関わり、互いの文化や国を理解し、より協調的で繁栄した安全な世界への貢献と、そうした世界での成功に必要な、世界中で通用する技能と国際的な視点を備えた日米の若いリーダーである「TOMODACHI 世代」の育成を目指しています。
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